ストーリー
日本馬のレベルアップに伴い、90年代後半から盛んになった海外遠征。国内で頂点を極めた馬も多く遠征しているが、中にはステイゴールドのように海外でG1初制覇を飾る馬も見られる。12年に香港のクイーンエリザベス2世Cを制したルーラーシップもそんな1頭だった。
父はキングカメハメハ、そして母に名牝エアグルーヴを持つルーラーシップは、09年の12月にデビュー。翌年の皐月賞には間に合わなかったものの、プリンシパルSを制して日本ダービーまで駒を進め、エイシンフラッシュの5着に食い込んだ。そして、休養を挟んで出走した12月の鳴尾記念では、同期で皐月賞2着のヒルノダムールを下して重賞初制覇。続く有馬記念はヴィクトワールピサの6着に敗れたが、明けて11年の日経新春杯では再びヒルノダムール、前年のジャパンC優勝馬ローズキングダムをまとめて下して優勝。G1には手が届かないながらも、同期のG1好走馬を向こうに回しても引けを取らぬ実力を身につけていた。
日経新春杯で重賞2勝目を挙げたルーラーシップは、次走にドバイシーマクラシックを選択。道中の折り合いを欠き、直線で失速して6着と初の海外遠征では苦杯をなめた。しかし、国内に戻って力の違いを見せたのが帰国初戦の金鯱賞だった。スタートで飛び上がり落馬寸前の態勢まで陥ったものの、最後方からまくり気味に4コーナー4番手まで進出すると、直線も力強く脚を伸ばしてキャプテントゥーレやアーネストリーを撃破した。
これでいよいよG1タイトル獲得目前か、と思われたルーラーシップ。しかし、続く宝塚記念では後方からひと伸びがなく、アーネストリーの5着に敗退してしまう。さらに、秋は爪の不安で天皇賞を回避。復帰戦となった有馬記念でも直線の坂でやや伸びを欠いてオルフェーヴルの4着とまたもやG1で結果を残すことはできなかった。そして翌12年はアメリカJCCを完勝したものの、単勝1.4倍の支持を受けた日経賞では3着。G1以外では3歳時の毎日杯5着以来となる敗戦を喫してしまうのだった。
まさかの日経賞での敗戦で、勢いを失ったかに見えた2度目の海外遠征。それが香港のクイーンエリザベス2世Cだった。しかし、道中3番手のインを追走したルーラーシップは、内をすくって直線入り口で先頭へ。4角で先頭に立った愛ダービー馬・トレジャービーチを置き去りにすると、そのまま後続との差をみるみる広げていく。最後は前年の香港ヴァーズ2着馬・サムザップに4馬身近い差をつける圧勝で念願のG1初制覇を達成したのだ。
ついにG1馬まで登りつめたルーラーシップ。今度は国内のG1制覇を目指し、春は宝塚記念、そして秋は天皇賞、ジャパンC、有馬記念に参戦したが、宝塚記念はオルフェーヴルの2着。そして秋はゲートの不安にも悩まされ3戦連続3着に敗退し、2つ目のG1タイトル獲得はならなかった。しかし、優勝時に見せた底知れぬ強さと血統背景は種牡馬としての魅力も大きく、その産駒からは父を超える活躍馬の出現が期待されている。