ストーリー
2009年12月のデビューから、翌2010年夏の1000万下特別・潮騒特別までの戦いを終えて休養に入ったカレンチャン。6戦3勝の成績は決して悪いものではなかったが、同世代のアパパネが3歳牝馬三冠を達成したのと比べれば、まだまだ栄光にはほど遠い場所で過ごした2歳〜3歳シーズンだった。
だが2011年、ターフに戻ったカレンチャンは凄まじい勢いでトップホースの座へと駆け上がっていくことになる。
復帰初戦となった準オープンの伏見Sでは3着に競り負けたが、続く山城Sは単勝オッズ1.9倍の断然人気を背負って2馬身半差の快勝、さらに阪神牝馬Sも制して重賞タイトルを獲得する。夏に入っても上昇は止まらず、函館スプリントSをクビ差で勝ち切り、キーンランドCも叩き合いに競り勝ってのクビ差1着。こうしてカレンチャンは、スプリント路線における最有力馬の1頭として位置づけられるまでになったのだった。
初のGI挑戦・第45回スプリンターズSには3番人気での出走。世界的な強豪ロケットマンや前年2位入線のダッシャーゴーゴーに人気の面で後れを取った。が、レースはカレンチャンの独擅場と化す。
先行勢を見ながら余力たっぷりに追走したカレンチャンは、直線、外から一気にスパート。キーンランドC3着のパドトロワ、セントウルS勝ち馬エーシンヴァーゴウ、ロケットマンや香港馬ラッキーナインらの叩き合いを一気に交わし去り、1馬身4分の3差をつけての先頭ゴールだ。
こうして準オープンからスプリンターズSまで5連勝をマーク、スプリント女王の座を勝ち取ったカレンチャンだったが、続く香港スプリントではラッキーナインの雪辱を許して5着に敗れ、2012年・5歳シーズン初戦のオーシャンSでも4着。暗雲立ち込める中、第42回高松宮記念には2番人気での出走となったのである。
高松宮記念で1番人気に支持されたのは、目下5連勝中、かつてのカレンチャンと同様の上昇ぶりを示すロードカナロアだった。しかし女王カレンチャンは、この1歳歳下の同厩馬を一蹴する。
コースが改められ、直線が伸びたうえに坂まで設けられた中京競馬場。それでも、2番手追走から抜け出したカレンチャンの脚色は一向に鈍らず、直後にいたロードカナロアは追いつくことすら叶わない。結局カレンチャンは、追い込んだ3番人気サンカルロをクビ差2着に、ロードカナロアを3着に封じてスプリントGI連覇を成し遂げたのである。
あふれるスピードと類稀なる底力で、スプリント路線に一時代を築いたカレンチャン。2012年の秋はスプリンターズSが2着、香港スプリントが7着と、いずれもロードカナロアに敗れたが、女王として弟分を引っ張り、その躍進を助けたこともまた、カレンチャンにとっての勲章といえるだろう。