ストーリー
かつては不治の病と言われた屈腱炎。しかし近年は医療技術の進歩により、レースに復帰するのみならず、以前と変わらぬ力を発揮する馬まで出現してきた。そんな代表格として語られるのが、05年、08年の最優秀ダートホース・カネヒキリだ。
カネヒキリのデビューは04年夏だったが、芝で2連敗後に休養。05年2月に復帰し、初ダートの未勝利戦を7馬身差で圧勝すると、続く500万では2着に大差と、ダート適性を発揮。再び芝に戻った毎日杯で7着に敗れると、以降はダート路線に的を絞り、端午S、ユニコーンSでまたも2連勝を飾った。
勢いに乗って挑んだ大井のジャパンダートダービーは道中4番手を追走すると、4コーナー手前で早々に先頭。そのまま直線は独走に持ち込み、4馬身差の大楽勝で初のG1を手中にした。さらに、休養を挟んで秋のダービーグランプリでも2着サンライズバッカスに2馬身半差で完勝。3歳馬同士では無敵の強さを見せつけたのだった。
続く武蔵野Sでは出遅れが響きサンライズバッカスに雪辱を許したカネヒキリだったが、続くジャパンCダートには1番人気で出走。中団から脚を伸ばし、残り200mで先頭。しかし内のシーキングザダイヤ、スターキングマンもしぶとく抵抗し、ゴールまで3頭並んだ激しい叩き合い。最後はクビの上げ下げの大接戦を制して、G1・3勝で最優秀ダートホースのタイトルを受賞した。
翌06年は初戦のフェブラリーSで2着シーキングザダイヤに3馬身差の完勝。しかし、続くドバイワールドCで海外の強豪相手に5位入線繰り上がり4着と初の完敗を喫すると、帰国初戦の帝王賞でもアジュディミツオーの2着と、ダートでは初めて連敗を喫してしまう。そして、追い打ちをかけるように屈腱炎の発症。約1年後の07年秋には帰厩、復帰を目指していたが、調整過程で屈腱炎を再発してしまい、さらに長期の休養を強いられることになったのだった。
手術や療養の末、08年の武蔵野S(9着)で復帰したカネヒキリは、再びG1の舞台・ジャパンCダートに出走する。道中4〜5番手を追走し、直線半ばで先頭に立つと、残り100mで並びかけてきたメイショウトウコン、ヴァーミリアンも退けて優勝。続く東京大賞典でもヴァーミリアンとの一騎打ちを制し、3年ぶり2度目の最優秀ダートホースのタイトルを獲得した。さらに、翌09年の川崎記念も優勝し、屈腱炎から復活してなんとG1・3連勝という偉業を達成したのだ。
こうして以前の力を取り戻したかと思われたカネヒキリだったが、同年のかしわ記念2着のレース中に骨折し1年の休養。復帰後の翌10年にはマーキュリーCも制したものの、ブリーダーズGC2着後に今度は別の箇所に屈腱炎を発症し、ついに引退を余儀なくされた。
しかし、度重なる故障から何度も復活を果たしたカネヒキリの活躍は、我々ファンはもちろん、競走馬に携わる関係者にも夢を与えたもの。今後もカネヒキリの後に続き「奇跡の復活」を果たす馬が、きっと何頭も出現してくれるに違いない。