ストーリー
創設当初は「外国産馬のダービー」とも呼ばれたNHKマイルC。クラシックが外国産馬にも解放された現在は、マイラーはもちろんのこと、日本ダービーを狙う馬も多く参戦する一戦となっている。そのNHKマイルCと日本ダービーの「変則二冠」を史上初めて達成したのがキングカメハメハだった。
キングカメハメハのデビューは03年11月の京都芝1800m新馬戦。中団を追走したものの勝負どころの行きっぷりが悪く、直線に向いても前とは5〜6馬身。かなり苦しいかと思われたが、エンジンがかかると一気の伸び脚を見せて見事にデビュー勝ちを収めた。
2戦目のエリカ賞も5番手をやや押っつけ気味の追走。4コーナー手前では激しく手が動いたが、ここでも新馬戦同様に直線に入ると力強い末脚を繰り出し、ゴール前できっちり差し切り勝ち。まだ荒削りな面を見せながらも、2戦2勝の成績を残して2歳戦を終えた。
年明け初戦、重賞初挑戦の京成杯は3着と初の敗戦を喫してしまう。しかし、続くすみれSでは4コーナーで先頭に立つ積極策から、軽く気合を入れた程度で2馬身半差の完勝。鞍上の仕掛けにもよく反応し、いよいよ本格化の手応えを感じられた一戦となった。
2度目の重賞挑戦は毎日杯。道中3番手を追走したキングカメハメハは、4コーナーで抜群の手応えで先頭に並ぶと、直線でも素晴らしい伸びを見せて2着シェルゲームに2馬身半の差をつけて、鮮やかに重賞初制覇を飾ったのだった。
デビューから中距離路線を進んできたキングカメハメハにとって、続くNHKマイルCは初の1600m戦。しかし、互角のスタートからスムーズに中団につけると、直線は手応え十分に馬場の中央へ。残り200mで先頭に立つと、見る見る後続との差を開き、2着コスモサンビームに5馬身差をつける完勝となった。
圧巻のNHKマイルCから3週後、迎えた日本ダービーは一気に800mの距離延長。前半はやや行きたがるしぐさを見せたキングカメハメハだったが、速い流れになったこともあり、向正面からはスムーズな追走。直線で大外に持ち出すと、ハーツクライの追撃を余裕を持って抑え2分23秒3というケタ違いのダービーレコードで圧勝となった。管理する松田国英調教師にとっては、01年のクロフネ(NHKマイルC1着→日本ダービー5着)、02年のタニノギムレット(同3着→1着)に続く3度目の挑戦で、史上初の「変則二冠」を達成した瞬間でもあった。
その後、天皇賞(秋)を前に屈腱炎を発症し、引退を余儀なくされたキングカメハメハ。08年には2頭目の「変則二冠」馬・ディープスカイが同じ道を目指したが、天皇賞(秋)では惜しくも3着に敗れている。しかし、NHKマイルCから日本ダービー、そして秋は天皇賞へという3歳馬にとって新たな道を切り開いた功績は大きく、今後はその産駒から「変則三冠馬」の誕生が大いに期待されるところだ。