セレクトセール2022 注目の種牡馬紹介

ポストディープインパクトの最前線について

様々な種牡馬の産駒が活躍した春のGI戦線

今年の春のGIは、様々な種牡馬の産駒が活躍しました。これまでGT戦線の主役であったディープインパクト産駒は、ポタジェの1勝のみと、まさにポストディープインパクトの争いが激化している印象です。

徳武氏 「これまでの日本のクラシックはサンデーサイレンス、キングカメハメハ、ディープインパクト、ハーツクライといったトップサイヤーたちが、タイトルを独占してきました。ただ、これらの種牡馬たちは既に死亡していたり、種牡馬を引退したりしているため、近年は他の種牡馬にも『名牝』と呼ばれている繁殖牝馬が回ってきており、次代を見据えた配合が重要なポイントとなっています」

ドレフォン

ドレフォン

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(JRA-VAN Ver.World)

特に、今年の春のクラシックシーズンですが、新種牡馬の産駒の活躍が目立っていました。その中でもドレフォン産駒のジオグリフは皐月賞を優勝。キタサンブラック産駒のイクイノックスは、皐月賞、日本ダービーで共に2着となっています。

徳武氏 「次代を見据えた配合が行われた一方で、日本では『新しい物好き』の傾向は根強く、特にドレフォンやキタサンブラックといった新種牡馬には、『名牝』と呼ばれている牝馬が多く配合されました。キタサンブラックはディープインパクトやキングカメハメハ産駒の全盛期に、GI・7勝をあげた馬でもありますし、ドレフォンもまた、アメリカのチャンピオンスプリンターであるように、高い競走能力を証明してきた事が要因となりました 」

キタサンブラック

キタサンブラック

現在、種牡馬として活躍を見せているロードカナロアやエピファネイアも、トップサイヤーの産駒たちを相手にしながら優れた競走成績を残してきた馬ですね。キズナもまた、ディープインパクトの代表産駒と言ってよいほどの活躍を見せていました。

徳武氏 「そうですね。GT競走で上位争いをするには、父親の競走能力の絶対値というのは非常に重要だと感じます。ただ、今年の日本ダービーの結果を見ていると、自身の能力が高いだけでなく、レース当日の状態も最高に良くなければ勝てないレースになっていると思いました」

勝ったのはハーツクライ産駒のドウデュースでしたが、勝ち時計の2分21秒9はダービーレコードともなっています。

徳武氏 「しかも、7着のジオグリフまでが2分22秒台で走っていたのも驚きでした。これも早い時期にダービーへのボーダーラインを超えるような賞金を得た陣営が、そこから逆算するような形でローテーションを組んでいき、最高の状態でレースに臨ませた結果だとも言えます。その中でイクイノックスは2着に入っていますし、ジオグリフはダービーの後に骨折が判明しましたが、それでもベストパフォーマンスを見せた皐月賞の強さは際立っていました」

ポストディープインパクト争いを制するのは?

エピファネイア

エピファネイア

今後、ディープインパクトやハーツクライの産駒が、クラシックに出走してこなくなった時に、必然的にキタサンブラックやドレフォンの産駒たちが、タイトルを独占していても不思議ではなさそうです。ただ、そこに待ったをかけてきそうなのが、ロードカナロアやエピファネイア、キズナといったポストディープインパクト争いを繰り広げている種牡馬たちです。

徳武氏 「エピファネイアとキズナは、同じ年にスタッドインを果たして、初年度の種付け料も一緒(250万円)でしたが、そこから産駒の活躍もあって、今や社台スタリオンステーションでも一ニを争うほどの種付け料に設定をさせてもらっています。2頭とも順調にGI馬を送り出していますし、ここ数年の配合相手には既に産駒が競走成績を上げている『名牝』と呼ばれる馬に加えて、次々と輸入されてくる海外のG1勝ち馬もたくさんいます。これまで以上に産駒は活躍してくるに違いありません」

キズナ

キズナ

この2頭に加えて、最近では日本だけでなく、シャトル先となったオーストラリアでもG1馬を送り出しているモーリスもまた、この争いに割って入ってきそうです。

徳武氏 「モーリスは種牡馬として国内外で同様な安定感がありますね。しかも産駒はスプリントからクラシックディスタンスまで、様々な産駒が誕生しています。オーストラリアは芝スプリントのレベルが高い国ですし、同じように芝スプリントのレベルが高い香港でも、向こう(オーストラリア)で誕生した産駒が活躍してくれそうです」

ロードカナロア

ロードカナロア

もちろん、今年のリーディングサイヤーでディープインパクトと首位争いを繰り広げているロードカナロアは、名種牡馬の道を歩んでいきそうですし、昨年急死してしまいましたが、同じキングカメハメハ産駒のドゥラメンテも、残された世代の中から、GI馬を送り出していきそうですね。

徳武氏 「ロードカナロアは、“サンデーサイレンスの血が入っているうえに、優れた競走能力を持った牝馬”を配合相手として高い割合で集めており、今後、デビューしてくる世代の層の厚さは言うまでもありません。早いうちにチャンピオンサイヤーとして君臨できるでしょう。ドゥラメンテは、タイトルホルダーやスターズオンアースが活躍しているだけに、失ったことは非常に残念ですが、せりの上場馬たちも素晴らしい産駒がそろっているので、どの産駒が父の後継馬になれそうかぜひとも注目してもらいたいです」

ドゥラメンテ

ドゥラメンテ

その意味でも、今年のセレクトセールは、未来のリーディングサイヤーとなる種牡馬を探すセールともなりそうですね。

徳武氏 「社台グループで上場を予定している、1歳セッションと当歳セッションの上場馬を見てきましたが、特に抜けて良いと思った馬たちの血統を見ると、配合されていた種牡馬がバラバラでした。セールでも特定の血統というよりも、個体の素晴らしい馬に高い評価が与えられそうですし、その優れた個体が多くいる種牡馬が、リーディングサイヤー争いをしてくるのではないでしょうか」

注記:当コンテンツの取材は、2022年6月7日に行っております。

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。