セレクトセールで落札されて、今年の上半期に大舞台で活躍した馬たちを、セールの時のエピソードや、デビューからの歩みなどを交えて紹介します。
2022年天皇賞(春)
タイトルホルダーの母メーヴェと、半姉のメロディーレーンは、山田弘オーナーと縁のある馬だった。2頭は共にレックスオーナーズクラブの募集馬だったが、山田オーナーは血統や馬体面を考慮して、どちらも購入を見送ってきたという経緯がある。
しかしながら、セレクトセール2018の当歳セッションに上場されたタイトルホルダーに対して、山田オーナーが2000万円でコールを送ると、その後は会場のどこからもスポッターの手は上がらなかった。
縁があるのは山田オーナーと、タイトルホルダーの生産牧場である岡田スタッドとの関係性にも言える。山田オーナーに初めてのGIタイトルを授けたサウンドトゥルーは、岡田スタッドの生産馬。互いに管理方針を理解しあっているからこそ、タイトルホルダーは丈夫に育てられ、その結果、非常に優れた心肺機能を有する競走馬となっていく。
2歳10月のメイクデビュー中山(芝1800m)を勝利すると、続く東京スポーツ杯2歳Sで2着に健闘。3歳初戦の弥生賞ディープインパクト記念を勝利し、皐月賞でも2着に入ったが、陣営が最大目標に掲げていたのは、この優れた心肺機能が最大限に発揮されるロングディスタンスの菊花賞だった。
その菊花賞では、弥生賞ディープインパクト記念と同じように先手を奪うと、他の17頭を従えるかのように1周目のゴール前を先頭で進んでいく。2周目の第3コーナーで差を詰められるも、最後の直線で再加速すると一気に後続との差を広げて、2着馬に5馬身差をつける圧勝劇。GI初制覇を果たした。
だが、それ以上に強いレースを見せたのが、今年の天皇賞(春)だった。
ここでも逃げの手に出たタイトルホルダーは、上がり3ハロンでも36秒4とメンバー中最速の脚を使うという、まさに「テン良し・中良し・終い良し」のレース内容。2着馬との差は7馬身と、まさに現役最強のステイヤーであることを証明した。
さらに、距離が一気に短縮となった宝塚記念でも、ハイペースの流れを2番手から押し切り、2分09秒7のコースレコードで優勝。日本競馬の悲願である凱旋門賞(仏G1)制覇は、セレクトセール出身馬のタイトルホルダーによってかなえられるのかもしれない。
注記:金額は、全て税抜金額
注記:2022年6月28日時点での情報を基に作成
ライタープロフィール
北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。