セレクトセール2022 セレクトセールの見どころ

セレクトセールの歴史

セレクトセールは、日本競馬の血統を作ってきた。それはセレクトセールから送り出された種牡馬の活躍によって証明されている。

マンハッタンカフェ

マンハッタンカフェ
(1998年セレクトセール 当歳セッション取引馬)

1998年の当歳セッションの取引馬となったマンハッタンカフェは、セレクトセール出身馬として初めてリーディングサイヤーに輝いた。その後もセレクトセール出身馬が次々とスタッドインする中、日本競馬界を世界レベルまで押し上げた2頭の名種牡馬が取引される。

それが2001年の当歳セッションの取引馬キングカメハメハであり、2002年の取引馬ディープインパクトだった。先に種牡馬入りしたキングカメハメハが2010年と2011年のリーディングサイヤーに輝くと、ディープインパクトはその翌年(2012年)から2021年までの10年に渡って、その座を守り続けている。

その後もセレクトセール取引馬からは、毎年のように種牡馬が誕生している。それどころか、セレクトセールに上場されたキングカメハメハやディープインパクトの産駒たちは、父の取引額をはるかに超えるような評価が与えられていく。

2頭の産駒たちもまた、優れた競走成績やブラックタイプの良さが評価される形で種牡馬入りすると、いまやセレクトセールに産駒を上場させるようにもなっている。

今年の当歳セッションにも、2017年のセレクトセール1歳セッションの取引馬だったアドマイヤマーズの初年度産駒が登場。父を彷彿とさせるような好馬体を受け継がれた産駒たちには、活発な取引の声がかかりそうだ。

セレクトセールが送り出したのは、種牡馬だけではない。血統、そして競走成績が優秀な「名牝」と呼ばれる牝馬も、このセールから次々と送り出されていった。

その代表格と言えるのが、2000年のセレクトセールの当歳セッションの取引馬で、牝馬としてはセレクトセール史上最高額(当時)となる2億3000万円で取引されたアドマイヤグルーヴだろう。

アドマイヤグルーヴ

アドマイヤグルーヴ
(2000年セレクトセール 当歳セッション取引馬)

現役時に2003年、2004年のエリザベス女王杯を連覇する活躍を残したアドマイヤグルーヴは、引退後にノーザンファームで繁殖入り。2012年にキングカメハメハとの間に誕生した産駒が、皐月賞、日本ダービーの二冠を制したドゥラメンテとなった。

また、2003年のセレクトセールの当歳セッションの取引馬となったフサイチパンドラも、2006年のエリザベス女王杯に優勝。ノーザンファームで繁殖入りした後は、日本調教馬として史上初となる芝のGI(海外G1を含む)で9勝をあげたアーモンドアイを送り出した。

セレクトセール出身馬から種牡馬、そして「名牝」と呼ばれている馬が次々と現れてくる理由には、「トップサイヤー×名牝」という、ベストトゥベストの血統馬が上場されているからである。

黎明期におけるセレクトセールは、種牡馬となる未来までも評価したうえで、サンデーサイレンス産駒の牡馬に高い評価が与えられてきた。それは時代が移り変わる中で、キングカメハメハやディープインパクトに変わっていった。

しかし、今年のセールに2頭の産駒は上場されていない。だがそれは、次代のリーディングサイヤー、そして「名牝」を探す楽しみがさらに増えたと言える。

今年のクラシック戦線。日本ダービーを制し、この世代の7522頭の頂点に立ったのは、ハーツクライ産駒のドウデュースであったが、皐月賞を制したのはドレフォン産駒のジオグリフ。そして皐月賞、日本ダービーで共に2着となったのはキタサンブラック産駒のイクイノックスだった。

また、6月4日から始まったメイクデビューでは、開幕週に新種牡馬の産駒が3頭勝ち上がり。その父である新種牡馬3頭(サトノクラウン、サトノダイヤモンド、ミッキーロケット)は、全てセレクトセールの取引馬であった。

今年のセレクトセールには、こうした話題を集める種牡馬の産駒たちや、次代のリーディングサイヤー最有力候補となっているロードカナロア。そして、現役時からしのぎを削り、種牡馬となってもライバル関係が続いているエピファネイアとキズナの産駒も上場される。

そして、ドレフォンのように自身の優れた競走能力を産駒にも反映してくれそうな、ナダル、シスキン、ブリックスアンドモルタル、ニューイヤーズデイといった輸入種牡馬の産駒たち。日本で産駒が大活躍を見せているAmerican Pharoahの持ち込み馬も、当歳セッションに6頭が上場される。

いずれの上場馬も、まさに「セレクト」された良血馬ぞろい。その中には繁殖としても評価を集めそうな牝馬も含まれている。いまや、海外の競走馬市場、特に繁殖牝馬セールにおける牝馬の価値は桁違いに高くなっている。

むしろセレクトセール上場馬から、未来の「名牝」候補かつ、競走馬としても優秀な成績を残す牝馬を探し出した方が、確実かつ、お買い得になるのかもしれない。

1歳セッションの見どころ

今年の1歳セッションで最も注目されるのは、この1歳世代がラストクロップとなるハーツクライ産駒だろう。

ドウデュース

ドウデュース
(父ハーツクライ)

ドウデュースを代表とする現3歳世代の産駒の活躍にも証明されているように、今、最もクラシックに近い種牡馬がハーツクライと言える。しかも、産駒は父譲りと言える成長力を備えているだけでなく、ハーツクライ後継種牡馬の活躍や人気からしても、将来的に種牡馬となる可能性を秘めているとも言える。

1歳セッションには6頭の産駒が上場されるが、その中でも活発な取引が期待できそうなのが、半兄に香港ヴァーズ(G1)2勝のグローリーヴェイズがいる、上場番号111番のメジロツボネの2021(牡)。また、ハーツクライの生産牧場である社台ファームから送り出された、上場番号98番のファタルベーレの2021(牡)にも注目したい。

そして、産駒の活躍を受ける形で、配合される繁殖牝馬の質が上がったエピファネイアとキズナの産駒は、1歳セッションの主役となるほどの層の厚さを誇っている。

19頭が上場されるエピファネイア産駒では、東京大賞典4連覇のオメガパフュームの半弟となる、上場番号26番のオメガフレグランスの2021(牡)。19頭が上場されるキズナ産駒では、アメリカ2歳牝馬チャンピオンを母に持つ、上場番号61番のシャンパンルームの2021(牡)。この2頭に、ミリオンホースの評価が与えられることを期待したい。

その他にも、2歳戦からクラシックにかけての活躍が証明されたキタサンブラックやドレフォンの産駒も人気を集めそうで、昨年の当歳セッションで、初年度産駒から5頭のミリオンホースを送り出したレイデオロの産駒たちも、その時と変わらない評価が与えられるに違いない。

当歳セッションの見どころ

新種牡馬の産駒のお披露目とも言える当歳セッション。未知なる期待も込められているのだろうが、今や新種牡馬産駒に対してのセールにおける評価は、ミリオン超えも珍しくなくなっている。

その中でも14頭を上場させているのが、サートゥルナーリアの産駒たち。上場番号339番のラルケットの2022(牡)は、半兄にマイルチャンピオンシップの勝ち馬ステルヴィオの名前が見つけられる。牧場スタッフからはサートゥルナーリア産駒だけでなく、この世代No.1との評価も与えられているだけに、ミリオン到達は約束されていると言えそうだ。

サートゥルナーリア

サートゥルナーリア

自身がセレクトセールの取引馬であるアドマイヤマーズの産駒は4頭が上場。その中では上場番号429番のトレジャリングの2022(牡)に注目している。父にSaxon Warriorを持つ半姉のスカイラー(牝)は、2021年のセレクトセール1歳セッションにて9000万円で取引されているだけに、その姉以上の取引額も期待したくなる。

6頭が上場されるナダル産駒では、近親から重賞勝ち馬が多数輩出されている、上場番号303番のエルディアマンテの2022(牡)を取り上げたい。上場順も当歳セッションでは3番目となるだけに、この馬が高い評価を受けた時には、その後に上場されるナダル産駒の評価も、総じて高くなっていくと言えそうだ。

この当歳世代の産駒数が少ないシスキンであるが、それでも当歳セッションには3頭が上場。上場番号313番のシャンボールフィズの2022(牝)は、近親にマンハッタンカフェの名前がある。昨年の当歳セッションで半兄のシャンボールフィズの2021(牡、父モーリス)が6400万円の評価を受けているだけに、その兄の姿を知る購買者にとっては、気になる存在になっているはずだ。

この当歳世代で最も多くの繁殖牝馬を集めたルヴァンスレーヴ産駒は、5頭が上場。来年の1歳セッションにも多くの産駒が出てきそうではあるが、この時期から声をかけたくなるような血統馬が、上場番号341番のフラーテイシャスミスの2022(牝)である。半兄にマイルチャンピオンシップ南部杯を連覇するなど、ダート重賞戦線で活躍したベストウォーリアがおり、ルヴァンスレーヴとの配合は、まさに砂の上での活躍が約束されたとも言える。

そして、この当歳世代がラストクロップとなるのがドゥラメンテの産駒たち。当歳セッションには13頭が上場されるが、来年の1歳セッションの前に産駒を手に入れたいという購買者も多いはず。上場番号330番のポジティブマインドの2022(牡)は、兄が2年続けてセレクトセール当歳セッションで取引されており、1つ上のポジティブマインドの2021(牡、父サトノダイヤモンド)は、昨年の当歳セッションで1億8000万円の評価を受けている。2年連続でのミリオン突破も充分に見込めそうだ。

そして、今年の当歳セッションの上場馬で、最もタイムリーな存在と言えるのが、上場番号359番のサザンスターズの2022(牡、父ミッキーアイル)。半姉は今年の牝馬二冠馬スターズオンアースであり、その年のクラシックホースの弟が上場されるというのも、セレクトセールならではと言える。最初の一声から目が離せないせりとなりそうだ。

注記:金額は、全て税抜金額
注記:2022年6月24日時点での情報を基に作成

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。