セレクトセール2022 丹下日出夫のセレクトセール日記

丹下日出夫のセレクトセール日記 7月11日(月)

始まりは清々しく

「セレクトセール2022」のオープニングは、リアルスティール×サマーハ(牡)。半兄はシャケトラ(父マンハッタンカフェ、阪神大賞典、アメリカジョッキークラブCなど6勝)。半姉サラーブ、半兄シハーブはともに3勝。現3歳の半姉ラスール(父キタサンブラック)は、現役2勝。クラブ法人でもセレクトセールでも人気者だが、リアルスティール産駒の本馬は、現在433キロ(1年経てば50キロくらい増えるだろう)。兄弟の中でも抜けて歩様が軽やか。まっすぐ歩く馬は、見ていて清々しい。1億8000万円でハンマーが落ちた。

セレクトセールの1歳セッションは、血統はもちろんだが、体力こそが大事。これでもかというくらいに引き出される下見に耐えられる頑丈さも、大きなポイントになる。

9番には、1歳のエピファネイア産駒の代表と言えるアウェイクの2021(牡)が登場。母の兄にゴスホークケン(朝日杯フューチュリティS優勝)、近親にステラヴェローチェ。体重は482キロとボリューミーで、エピファネイア産駒の典型的なシルエットを誇る。2億5000万円という高評価を得た。

81番のパンデリングの2021(牝)は1億4000万円。107番のブロンクスシルバーの2021(牡)は1億2000万円。126番のトップデサイルの2021(牡)は1億3500万円。他にもエピファネイア産駒は、牡も牝も、リザーブ価格の3倍近い高値で推移していた。

ドゥラメンテ産駒のトップバッターは、11番のウィープノーモアの2021(牡)。少し落ち着きがない、カッカした気性だが、いかにもドゥラメンテらしいシルエットをした鹿毛馬。1億円ちょうどでハンマーが落ちた。

ドゥラメンテ産駒は“貴重種”とあって、その後も値段は尻上がり。34番のフォースタークルックの2021(牡)は、母がフラワーボウルS(G1)など北米で12勝。肌艶が良く、隙のないコンパクトな馬体で、2億円で落札。63番のシーヴの2021(牡)は2億2000万円。71番のデックドアウトの2021(牡)は1億3000万円。96番のジェイウォークの2021(牡)は3億円ジャスト(母は米2歳牝馬チャンピオン)。

ポスト・ディープの有力種牡馬の産駒は

ロードカナロア産駒の14番のリリーズキャンドルの2021(牝)は、ひとつ上にSaxon Warrior産駒の牡馬がいて、実はワタクシのPOG指名馬だったりして(笑)。本馬も、目元の涼やかな健康感にあふれる芦毛で、8000万円で落札。ちょっとばかりひいき目も入っているけれど、セレクトセールは兄姉たちの馬体などを思い出しながら、アレコレ確認したり、新たに想像したりする場所でもあります。

今年のロードカナロア産駒は、びっくりするような高額馬は少ないけれど、146番のペディクラリスの2021(牡)は1億円。ロードカナロア産駒の値段は底が堅い。

モーリス産駒の評判は高く、55番のホームカミングクイーンの2021(牡)は、激しい競り合いの末、2億2000万円でハンマーが落ちた。半姉のシェイルは、モイグレアスタッドS(愛G1)の勝ち馬。現2歳の半姉アイリッシュパール(父Saxon Warrior)は、もうすぐ始まる新潟でデビュー予定。本馬はモーリスのシルエットが色濃く、心身ともに無駄や油断が少ない。

モーリス産駒の76番のモシーンの2021(牡)は、リザーブ価格が1億円。3億円近くには軽く行くだろうとは思っていたが、4億円を超えても、まだ3人が手を上げ、4億5000万円という結果に、溜息と拍手(笑)。

キズナ産駒は、総じて骨量豊富。太い筋肉を持ち、ズッシリとした重量感のある仔が多いが、柔らかみのある馬がいい。好みが分かれ、値段にもバラつきがあるが、87番のアルビアーノの2021(牡)は、母がスワンS、フラワーCに優勝。母方の血は安心感も高く、1億2500万円の値をつけた。

ハーツクライ産駒は、今年が最終年。しかし、出がらし感はまったくなく、むしろこれまで以上に、父に肌合いもシルエットもよく似た仔が多い。47番のスパニッシュクイーンの2021(牡)、64番のアレイヴィングビューティの2021(牡)は、なんだか双子の兄弟みたい。前者が1億7500万円、後者が1億7000万円で、ともに追分ファームの生産馬だった。98番のファタルベーレの2021(牡)は、1億円ジャスト(母は米G1のデルマーオークス優勝)。

サトノダイヤモンドは、今年の2歳世代がファーストクロップ。セカンドクロップの代表産駒は、36番のウィキッドリーパーフェクトの2021(牡)。半兄にホープフルS優勝馬のハートレーがいる。父の母系であるアルゼンチン系が出ているのか、ムチムチ感がなんともいえない(笑)。1億1500万円で落札された。

あれから1年

現1歳がファーストクロップとなるレイデオロの目玉は、なんといっても46番のラルケットの2021(牡)。半兄のステルヴィオ(父ロードカナロア)は、マイルチャンピオンシップに優勝。同じロードカナロアを父に持つ現3歳の半姉ステルナティーアは、サウジアラビアロイヤルC2着。父がレイデオロに替わり、本年の1歳馬は一回り馬格の大きな黒鹿毛(体重は470キロ)。2億2000万円という値段にも、納得感あり。

レイデオロと同じ年に種牡馬デビューしたブリックスアンドモルタルは、去年の当歳時は、小さい仔が多いかなと半信半疑で見ていたが、それから1年が経ち、産駒たちはみんな急成長。104番のマキシマムドパリの2021(牡)は1億3500万円。その他にも、“億”には届かなかったが、リザーブの2倍以上の値段で取引される仔が多かった。

シュヴァルグラン産駒は、105番のラリズの2021(牝)が、“億”まであと一歩の9800万円の評価を得た。

ワンプッシュ

持ち込みの注目馬は、まず23番のジェットセッティングの2021(牡)。1億5500万円でハンマーが落ちた。

現2歳の半兄ペースセッティング(父Showcasing)は、今週末の福島・芝1200mでデビュー予定。びっくりするような速い馬かもしれない。Frankel産駒の本馬も、今年の会場に展示されているスポーツカー・アストンマーチンのような快速系。ダービー馬ではないような気はするが、短距離GIなら、2〜3勝は行けるかもしれない。

91番のSaxon Warrior×レッドティー(牡)は4900万円。Saxon Warriorの評価はまだ手探りといった感じですが、2日目の当歳セッションでは、また新たな展開が見られるかもしれない。

112番のリオンディーズ×オーサムウインド(牡)は、馬っぷりが評価されて1億500万円で落札。

ファンの多いオルフェーヴル産駒では、170番のユードントラヴミーの2021(牡)が1億1000万円で落札された。

大トリを務めたのは、243番のドゥラメンテ×リッスン(牡)。四肢も背中も首もスラリと長く、顔も男前なんだよなぁ。8200万円は当然か。

1歳セッションの前年(2021年)の総売上額は、116億3300万円、平均価格は約5147万円だったが、本年の総売上額はなんと128億7000万円で、平均価格は約5797万円。どちらも1歳セッションの新記録だった!!

戦い終わって陽は暮れて。1歳セッションの新記録とは……。参加している馬主さんも、テレビ中継の画面の前の人も、そしてワタクシも、楽しかったなぁ。そして長かったね(笑)。

注記:金額は、全て税抜金額
注記:せり当日には、写真を撮影しておりません

ライタープロフィール

丹下日出夫(競馬評論家)

「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。