ストーリー
タイキシャトルやシンボリクリスエスなど数多くの名馬を育てた藤沢和雄調教師にとって、グランアレグリアは栄光のトレーナー生活を締めくくるに相応しい傑作となった。父ディープインパクト、アメリカでG1レース2勝の母タピッツフライ(その父タピット)から2016年に北海道・安平町のノーザンファームで生まれた牝馬は、類稀なるスピードと成長力で競争の厳しいマイル戦線に君臨した。
グランアレグリアは2歳新馬戦が始まる最初の週に早々とデビュー勝ちした。芝1600mで古馬顔負けのタイムを叩き出すと、4か月の充電を経たサウジアラビアロイヤルCでは牡馬を相手に3馬身半差の圧勝で重賞初制覇。3戦目で朝日杯フューチュリティSに駒を進める。重賞で牡馬を負かした実績、新馬戦で一蹴したダノンファンタジーが1週前の阪神ジュベナイルFを制した事実もあり、当日は単勝1.5倍の圧倒的人気を集めたが、アドマイヤマーズの3着に敗れ初黒星を喫した。
明け3歳、ぶっつけ本番で臨んだ桜花賞はダノンファンタジーに次ぐ2番人気に甘んじたが、スピードの違いを見せつけて完勝。改めて実力を証明し、次戦のNHKマイルCでアドマイヤマーズへの雪辱を狙った。しかし、直線伸びを欠いた上に進路妨害で4位入線から降着になるなど、この頃までは能力だけで走っている状態だった。
そんなグランアレグリアは暮れの阪神Cで再始動すると、初対戦の古馬たちをノーステッキで5馬身ちぎる圧巻の勝利。目覚めの時を迎えた。4歳初戦の高松宮記念は後手の発馬でハナ差惜敗も、続く安田記念では単勝1.3倍の大本命アーモンドアイを2馬身半差と寄せつけず撃破し、高い能力の一方で危うさも覗かせた3歳春までの姿を払しょくする。秋は初戦のスプリンターズSを豪快な追い込みで制すと、次戦のマイルCSでは宿敵アドマイヤマーズらを一刀両断に斬り捨ててマイルG1春秋制覇を成し遂げた。
明け5歳はベストのマイルから2000mにも挑戦したが、始動戦の大阪杯はあいにくの道悪でスタミナを失い4着に終わる。続くヴィクトリアマイルでは牝馬同士で力の違いを見せつけ、史上初の古馬芝マイルG1完全制覇を達成。3戦目の安田記念は動きにいつもの切れがなくアタマ差で惜敗し、そこから直行した天皇賞(秋)もエフフォーリアらに完敗して2000mの壁は乗り越えられなかった。それでも、引退レースのマイルCSで史上6頭目の連覇を果たしてG1レース6勝目。3年連続JRA賞受賞(2019最優秀3歳牝馬、2020・2021最優秀短距離馬)の栄誉とともに繁殖入りした。