ストーリー
日本調教馬が苦戦を続けてきた香港スプリントで、父ロードカナロアと親子制覇の快挙を成し遂げたダノンスマッシュ。2015年に北海道・新ひだか町のケイアイファームで母スピニングワイルドキャット(その父ハードスパン)から生まれ、伯父にウォーチャント(2000年BCマイル勝ち)を持つ良血馬は、年齢を重ねるとともに素質を開花させていった。
2歳秋のデビューから3戦2勝で朝日杯フューチュリティSまで駒を進めたダノンスマッシュだが、当時は牧場の同期だったダノンプレミアムの5着に敗れるなど、まだ進むべき路線が定まっていなかった。3歳春はアーリントンCとNHKマイルCで完敗が続き、夏の北海道開催からスプリント路線に専念して才能を発揮しはじめる。
ダノンスマッシュはNHKマイルC後に函館の自己条件で仕切り直すと、1200m を1馬身半差の快勝でオープン入り。次戦のキーンランドCでは古馬のスピードに及ばずも2着争いを制して目途を立てる。そして、3か月の休養から復帰した京阪杯では好位差しの横綱相撲を決め、3歳シーズンを重賞初制覇で締めくくった。
ひと息入れて4歳初戦のシルクロードSも制したダノンスマッシュは、重賞連勝の勢いを持って高松宮記念へ。しかし、レースは外枠からのロスが大きく4着、さらに飼料の汚染問題に巻き込まれて函館スプリントSを除外と不運が続いた。その後、仕切り直しのキーンランドCでタワーオブロンドンの追撃を封じ、改めて実力をアピールするも、直行したスプリンターズSは春と対照的に内枠があだとなりタワーオブロンドンの3着。香港スプリントへの遠征は完敗に終わり、充実期の4歳をかみ合わないまま終えた。
5歳になっても始動戦のオーシャンSを勝つ一方、高松宮記念は道悪で大敗。その悔しさを京王杯スプリングCで晴らすも、安田記念は距離を克服できずに完敗と、前哨戦勝ちの流れを本番につなげられない状態が続く。しかし、ダノンスマッシュは苦境を自らの力で打破する。
秋はセントウルS快勝から本番のスプリンターズSでまたしても敗れたものの、香港スプリントでは大外枠を克服して見事に前年の雪辱。難攻不落のレースで悲願のG1初制覇を成し遂げると、6歳初戦の高松宮記念でも接戦を制し、G1連勝で満天下に実力を知らしめたのだった。この後は激走の反動か精彩を欠き、引退レースの香港スプリントも落馬寸前の不利により不本意な結果に終わったが、幸い大事には至らず種牡馬に転身した。