ストーリー
三冠馬オルフェーヴルや奔放な人気者ゴールドシップ、障害王オジュウチョウサンのように、スタミナ豊富な産駒が多かった種牡馬ステイゴールドにとって、その晩年に当たる2015年に北海道・安平町のノーザンファームで誕生したインディチャンプはスピードで一時代を築いた孝行息子。母ウィルパワー(その父キングカメハメハ)の名が持つ本来の意味(Will Power=意志力)から転じ、インディカーの2014年王者ウィル・パワーに因んだ馬名の妙を体現した。
インディチャンプは母の半兄にネオリアリズムとリアルインパクト、アイルラヴァゲインらがいるスピードあふれるファミリーの出身で、2歳暮れのデビュー戦は芝1400m、明け3歳の2戦目は1600mで連勝する。しかし、3戦目で重賞に初挑戦した毎日杯ではダービー候補の呼び声がかかるブラストワンピース、続くアーリントンCでは後のスプリント王タワーオブロンドンにも敗れ、完成度で同世代に一歩後れを取っていた。
それでも、夏場の自己条件から連勝でオープン入りを果たすと、4歳初戦の東京新聞杯で1番人気に応え重賞初制覇。3連勝で本格化を迎える。次戦のマイラーズCは開幕週の馬場で先行勢を捕らえ切れずに連勝は止まったものの、続く安田記念では単勝1.7倍の1番人気アーモンドアイに対し、インディチャンプは4番人気ながら19.2倍と不利な下馬評を覆す大仕事。逃げ粘るアエロリットを好位の一角からクビ差捕らえる一方、アーモンドアイの追撃もさらにハナ差封じ、正攻法でG1のタイトルを手中に収めた。
秋は毎日王冠でひと叩きしてからマイルCSへ。ここでも3番人気と評価こそついてこなかったが、1番人気ダノンプレミアムを一刀両断に斬り捨てる完勝で史上7頭目の同一年マイルG1春秋制覇を達成(2019年当時)する。香港マイルへの遠征は度重なる不利で7着に終わったものの、JRA賞最優秀短距離馬に選出された。
5歳はインディチャンプの時代になるかに思われたが、強豪ひしめくマイル路線で覇権を握るのは難しかった。苦手の休み明けを中山記念で迎え、叩き2戦目のマイラーズCで首尾よく勝利を収めたものの、結果的にこれが生涯最後の白星となる。続く安田記念は3着、マイルCSも2着とグランアレグリアの前に連覇を逃すと、その後はスプリント戦線に矛先を向けるも、6歳の高松宮記念ではクビふたつ差の3着とG1で惜敗が続く。さらに安田記念、マイルCSとも5歳時より着順を落とし、香港マイルでの5着を最後に現役引退。種牡馬に転身した。