ストーリー
アルアインは父ディープインパクト、アメリカでG1勝ちの母ドバイマジェスティ(母の父エッセンスオブドバイ)から2014年に北海道・安平町のノーザンファームで生まれ、スピードを武器に皐月賞と大阪杯でG1レースを2勝。ダービー馬の全弟シャフリヤールと合わせてクラシック二冠制覇も果たした。
2歳晩秋に初陣を飾ったアルアインだが、その内容は飛び上がるようにスタートすると直線もR.ムーア騎手の剛腕を頼みにする、若駒らしさを随所に感じさせるものだった。2戦目は五分の発馬からラチ沿いを進み、阪神競馬場の外回りと内回りコースの合流点を利用して抜け出すセンスを披露したものの、明け3歳初戦のシンザン記念は発馬で再び後手に回り、直線でも落馬寸前の不利を受けて初黒星と、駆け出しの頃はゲートに課題を抱えていた。
ひと息入れて臨んだ毎日杯もゲートは速くなかったが、二の足で2番手を奪取すると好タイムで押し切り、重賞初制覇で皐月賞への最終切符を手にする。本番は18頭中11頭が重賞勝ち馬という混戦模様。直前で浮上したアルアインは9番人気と評価がついてこなかったが、ここ一番でスタートを決めて好位を追走。背後から先んじた僚馬ペルシアンナイトを差し返す勝負根性を見せレースレコードをマークし、9年目の松山弘平騎手とともにG1初制覇を飾った。
明確な敗因があるシンザン記念を除き、これで5戦4勝と順風満帆に来ていたアルアインだが、ここから長らく白星に見放されることになる。ダービーはスローペースの中で身動きが取れないまま5着に敗れ、秋の菊花賞は適性を超える距離で踏ん張ったものの7着。皐月賞後は同じ中山競馬場のセントライト記念と翌年秋のオールカマーで2着、京都競馬場では京都記念2着、マイルCSも3着、阪神競馬場でも大阪杯3着と、すでに実績のある競馬場では上位争いする一方、東京競馬場や初参戦の競馬場では入着を逃し、好走できる条件が分かれていった。
そして、皐月賞から2年近い月日が流れた5歳の大阪杯で待望の瞬間が訪れる。前年3着と実績のあるレースに加え、芝の状態は良発表でも前日からレース当日の昼まで稍重というパワーを要す条件。ディープインパクト産駒としてはめずらしく瞬発力勝負を不得手としてきたアルアインだが、この日はトンネル脱出に成功するとともに、14年目の北村友一騎手にJRAのG1初勝利をプレゼントした。しかし、秋になると持ち味を発揮できずに大きな着順を続け、種牡馬に転身する日を迎えた。