ストーリー
決して器用とは言えない走りながら、秀でた能力を武器にG1戦線で安定した戦績を築き上げたスワーヴリチャード。2014年に北海道・安平町のノーザンファームで父ハーツクライ、母ピラミマ(母の父アンブライドルズソング)から誕生した栗毛の牡馬は、大器の評価とともに素質を開花させていった。
スワーヴリチャードは生後4か月のセレクトセール当歳で1億5500万円の高値を呼ぶほどの期待馬だった。しかし、デビュー当初はゲートに課題を抱え、初陣は直線の猛追及ばずハナ差の2着。2戦目は単勝1.1倍の圧倒的人気に応えるも、3戦目で重賞に挑んだ東京スポーツ杯2歳Sはまたも出遅れてクビ差の2着と結果を伴わせられないまま2歳戦を終えた。
それでも、恵まれた馬格と雄大なフットワークに2歳戦の「負けてなお強し」の内容も相まって、次第に「大器」の呼び声が掛かるようになっていく。3歳初戦の共同通信杯もゲートは遅かったものの、鞍上のステッキひと振りで2馬身余り抜け出す完勝。大器の片鱗を見せつけて皐月賞を2番人気で迎える。しかし、初めて互角の発馬を決める一方、右回りで手前を替えないまま最後の直線を走り切って6着。この先もスワーヴリチャードは右回りを苦手とした。
続くダービーは実績のある東京競馬場で内枠に恵まれた。ところが、超スローペースの中団で身動きを取れないうちにレイデオロの奇襲に後れを取り、懸命に挽回するも3/4馬身差で惜敗。その後は疲労により秋のアルゼンチン共和国杯まで復帰が遅れたが、初対戦の古馬たちを寄せつけずに成長を印象づけ、翌春にいよいよ覚醒の時を迎える。
4歳初戦の金鯱賞で着差以上の完勝を収めたスワーヴリチャードは、次戦の大阪杯で右回りを克服。向正面15番手から一気に先頭を奪い、内ラチ沿いを粘り込むM.デムーロ騎手の好判断に導かれて待望のG1初制覇を飾る。次戦から約1年8か月に渡って白星から遠ざかることになるが、初マイルの安田記念、驚異的なレコード決着のジャパンC、明けて5歳は海外初遠征のドバイシーマクラシック、右回りの宝塚記念でいずれも3着と、未経験や不向きな条件でも堅実に活躍し続けた。
そうして巡ってきた5歳のジャパンCは、勝ち時計が前年より5秒余り要す重馬場を味方につけて久々の美酒。2度目のG1制覇で復活の狼煙を上げたものの、次戦の有馬記念後に右飛節の負傷で引退、種牡馬入りすることになった。