ストーリー
シャフリヤールが北海道・安平町のノーザンファームで父ディープインパクト、母ドバイマジェスティの元に生まれたのは2018年4月13日。ほぼ1年前の4月16日には全兄アルアインが皐月賞を制しており、大きな期待とともに競走生活へと踏み出した。
シャフリヤールのキャリア序盤は兄の通った道に重なるものがあった。兄と同じく2歳の10下旬にデビュー勝ちした弟は、ひと息入れて2戦目には共同通信杯で重賞に初挑戦し、エフフォーリアの3着に敗れるも素質の一端を見せる。そして、3戦目の毎日杯では1分43秒9の驚異的なタイムでレコード勝ち。兄弟制覇で初タイトルを手にした。
ただ、兄の背中を追うのはここまでだった。500kgを超える馬格に恵まれていたアルアインとは異なり、450kgを割り込む小さめな体格のシャフリヤールは皐月賞を自重し、ダービーへの直行が選択される。そのダービーは皐月賞を完勝したエフフォーリアの単勝1.7倍に対し、共同通信杯で約3馬身差をつけられていたシャフリヤールは4番人気ながら11.7倍という評価に過ぎなかった。しかし、シャフリヤールはエフフォーリアをマークして差し切り、わずか10p差で勝利。2分22秒5のレースレコードで世代の頂点を極めてみせた。
3歳秋は初戦の神戸新聞杯で初の道悪に対応できず、菊花賞をパスして向かったジャパンCでも1歳上のダービー馬コントレイルの後塵を拝して3着。その後は4歳初戦のドバイシーマクラシックまで間隔を空けた。秋の連敗から4か月ぶりの実戦で初の海外遠征もあり4番人気、5頭が遠征した日本勢の中でも3番手と評価を落としていたが、逃げるオーソリティを背後でマークすると測ったように差し切り。ダービー馬の底力を改めて知らしめた。
しかし、これが最後の勝利となる。さらに2年9か月続く現役生活では日本と海外の往復を繰り返し、現地入り後の検査で除外となった香港を含めば4か国に渡航。この間の11戦で国内での連戦は1回だけという日々が続いた。
それでも、戦績そのものは充実しており、とりわけ2400m前後での安定感は群を抜いていた。4歳で再挑戦したジャパンCと6歳初戦のドバイSCでは2着、5歳から2年連続で遠征したBCターフはともに3着と世界の一流を相手に上位争い。ラストランとなった6歳の有馬記念では不利な大外16番枠となるも、ハナ差の2着に持ち込む激闘を演じて勝者に劣らぬ喝采を浴び、惜しまれながら種牡馬生活の待つ故郷へ帰っていった。