「セレクトセール2022」の当歳セッションは、昨年より開始時間を30分早め、9時半からスタート。301番のレイデオロ×チェリーコレクト(牡)は、半姉にダイアナブライト(ダートグレード競走で活躍)、半兄にワーケア(アイビーS優勝、弥生賞ディープインパクト記念2着、ホープフルS3着)がいる。初日の1歳セッションで半姉(父キズナ)が7800万円で取引されたが、本馬は8600万円で落札された。
当歳の展示などを見て、まず感じたことは、1〜2月生まれはすでに離乳。母親や乳母なしで歩く仔もいるが、今年はいつもの年より、なんだか一人で歩いている馬が多いような気がする。独り歩きのできる仔は、前肢も後肢もブレが少なく、真っすぐ歩ける仔もけっこういた。
なんて、2日目はドゥラメンテの価値がさらに上がるだろうと予測はしていたが、トップバッターの310番のコールバックの2022(牡)は、いきなり2億6000万円。日本ではあまりなじみのない血統だが、母は北米G1勝ち、半兄のトミービーは北米3勝。牝系もブラックタイプがきれいに並び、バックボーンも秀逸。肌合いやシルエットは父にソックリ。タイトルホルダーに似た、すばしっこそうなファイターです。
330番のポジティブマインドの2022(牡)は、ふっくらと厚みのある栗毛。母はアルゼンチンの2歳牝馬チャンピオン。配合牝馬がアルゼンチーナだと、とんがったドゥラメンテの仔も、豊穣な体に出るんだなぁ。1億5000万円でハンマーが落ちた。
他にも、338番のリトルモンスターの2022(牡)、357番のアトミカオロの2022(牝)、369番のエスポワールの2022(牡)など、リザーブ価格の2〜3倍以上の馬が続出。
大本命は、393番のシャンパンエニワンの2022(牡)。母は米G2勝ち馬。310番と330番の2頭を足して二で割ったような、適度な重量感もあり、ラインもスカッとしている。1億円手前で、「2億円!」とひと声。そこからは1000万円単位で急ピッチ、お値段は3億2000万円に沸騰。
ドゥラメンテに対する競馬の世界の人たちの熱気がひしひしと伝わってきます。
対抗格となる西の横綱種牡馬は、エピファネイア。322番のベルダムの2022(牡)の祖母はドナブリーニ。なるほど、骨格などジェンティルドンナと共通点が多く、1億7000万円で落とされた。
340番のワッツダチャンセズの2022(牡)は1億500万円。348番のアットザシーサイドの2022(牡)は1億1000万円。そして本日のエピファネイア産駒の目玉である367番のモシーンの2022(牡)は3億円。前日落札された兄(父モーリス)も、お値段(4億5000万円)通りの怪物系だが、父がエピファとなり、シルエットは伸び伸び。若干小ぶりだが、素直に前向きに歩く。小さいのに完歩は大きく、目もぱっちりと涼やかで、市川海老蔵チックな男前です(笑)。
353番のシーズアタイガーの2022(牝)は、とりあえず写真映えは一番(笑)。さて実馬はどうか。若干首の角度など気になる点もありましたが、四肢が長く、歩くと首も低くなる。2億8000万円は当然なんだろう。426番のラーゴブルーの2022(牝)の祖母はベネンシアドール、母の姉はデニムアンドルビー。1億3000万円も納得か。
キズナ産駒は、302番のレディイヴァンカの2022(牝)がいきなり1億2000万円で落札。334番のファイネストシティの2022(牡)は、あれれ? 意外や6000万円(現2歳にロードカナロア産駒の兄−リプレゼントがいます)。
しかし、386番のミスエーニョの2022(牝)は1億8500万円と大噴火。母の肌艶を受け継ぎ、皮膚も滑らか。骨格もまずまず、何よりキズナ産駒特有のゴツゴツ感がない。373番のカレドニアロードの2022(牝)は1億1000万円。今年もやっぱり、いい馬がそろっているなぁ。
ロードカナロア産駒は、332番のマニーズオンシャーロットの2022(牝)が1億6000万円。354番のマリアロワイヤルの2022(牡)は、まだ身体が幼く4300万円だったが、歩きはリズミカルで、赤丸をグリグリ。382番のコレクターアイテムの2022(牡)は6600万円。401番のワイルドラズベリーの2022(牝)は6400万円。410番のフローレスダンサーの2022(牡)はバジオウの半弟、曽祖母はダンシングキイで2億6000万円。
昨日ほどではないが、モーリス産駒も403番のクルミネイトの2022(牡)が9000万円。464番のキャリコの2022(牡)の祖母はモシーン。せめぎ合いはジワリジワリ、結果はやっぱり“億”超え。最終価格は1億3000万円だった。
当歳が4世代目となるドレフォンは、現3歳のジオグリフ(皐月賞優勝)など、馬体や特性のモデルができた。365番のレディデラウェアの2022(牝)、392番のダイアナヘイローの2022(牡)など、落札価格に見合った良駒がズラリ勢ぞろい。
種牡馬としてドレフォンと同世代のキタサンブラックも、370番のプリュスの2022(牡)など、イクイノックスをイメージさせる、しなやかな馬がラインナップされていた。
リアルスティール産駒は、374番のグローバルビューティの2022(牡)が1億500万円。母はアルゼンチンで3勝(G1勝ちあり)、眺めていて安心感のある馬です。
ブリックスアンドモルタルは2年目。初日の1歳も好調だったが、325番のアウェイクの2022(牡)は、なんと3億1000万円。昨日のエピファネイア産駒の兄より一段上の高価格で落札。335番のブルーミングアレーの2022(牡)のお値段は9400万円だった。
兄姉にGI馬を持つ血統馬といえば、359番のミッキーアイル×サザンスターズ(牡)。半姉はオークス馬スターズオンアース。父はスピード色が濃いが、本馬の馬体のラインは姉によく似た中距離馬のソレ。1億4000万円で落札された。
350番のレイデオロ×ヴィアフィレンツェ(牡)の祖母はヴィアメディチで、母の弟にはアドマイヤマーズがいる。1億7000万円は決して高いとは思わない。
American PharoahやJustify、ワタクシの一押しのSaxon Warriorなどの持ち込み馬は、手綱を握っている人にリザーブ価格をそっと尋ねると、意外に値付けが低く(それでも2000万円以上が多かったが)、それが逆に集客作用となり、手を上げる勇気になる。売りたいなと思っていた値段近くに上がる。せりのコツは、当歳セッションは特に、リザーブ価格が控えめなほうが好結果を残すことが多い。
当歳セッションの新種牡馬の注目馬は、サートゥルナーリア産駒たち。トップバッターの316番のカゼルタの2022(牡)の祖母はエルダンジュ。とびぬけた母系ではないけれど、馬体の造りや張り、バランスを評価されて1億4000万円で落札。下馬評の高さを証明した。
339番のラルケットの2022(牡)は3億円で落札。レイデオロ産駒の兄は、昨日の1歳セッションで2億2000万円。兄と毛色は似ているが(黒鹿毛)、父がサートゥルナーリアに替わり、馬体のラインがよりしなやかになった(ような気がする)。
初年度ゆえ、配合牝馬はA級馬ばかりとは言えないが、首差し、角度、背中のライン、胸や臀部の厚みに、ほぼみんな瑕疵がない。
サートゥルナーリアが所属したキャロットクラブの会報誌で、秋田代表が「柔軟性に、完歩の大きな常歩」と、産駒たちを評されていましたが、なるほどなぁ……。
アドマイヤマーズ産駒は、406番のタムニアの2022(牝)が名刺代わり(3800万円)。特注馬は429番のトレジャリングの2022(牡)でしょうか。母は重賞を2勝、現2歳の兄スカイラー(父Saxon Warrior)は、6月の東京開催の新馬戦で4着でしたが、本馬は体つき、目つき、肌艶など、パパにうり二つで、1億4500万円で落札。個人的感想ですが、アドマイヤマーズの父ダイワメジャーより皮膚が薄く、バランスが取れて手先も軽い。メジャーもいい後継者ができたなぁ。
ルヴァンスレーヴの代表産駒は、兄にベストウォーリアを持つ341番のフラーテイシャスミスの2022(牝)と355番のパンデイアの2022(牡)。シンボリクリスエス系だけに、もっとダート馬っぽい硬い馬が多いのかなと思っていたが、四肢も体も太すぎもせず細すぎもせず。ミリオンホースは現れなかったが、ダートの次代を担う中心種牡馬になるかしれない。
ニューイヤーズデイ、ナダル、そしてシスキンは、ダートか芝の短距離系か。特徴がはっきりしているぶん、かえって価格が上昇しない。
セレクトは毎年必ず、まったく想定外の高額馬が出現するが、419番のシャンブルドットの2022(牡)の父はフィエールマン。お尻は小さめ、身体の幅やボディライン等、パパそっくりだなと思っていたが、なんと2億1000万円……。いやもう、びっくりしましたよ。
大トリの541番のサートゥルナーリア×ミカリーニョ(牡)は2億2000万円。父と母の特性をまんべんなく受け継ぎ、足して二で割るのではなく、2×2で4倍ほどいい馬になった? この馬の姿を、今日も夢に見る。来年、再来年。そしてこれからも、きっと何度も思い出す。
2日目の当歳セッションの1頭の平均価格は5730万円。落札総額は128億9250万円。2日間合わせての落札総額は257億6250万円と、ほんとすごいセレクトセールだったなぁ。
去年も面白かったが、今年も、そしてたぶん来年も。セレクトはいつだって楽しい。
注記:金額は、全て税抜金額
ライタープロフィール
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。