ストーリー
マクって差して3馬身もちぎったデビュー戦、圧倒的な切れ味で差し切ったファンタジーS、最後方から直線だけでゴボウ抜きを決めたチューリップ賞……。スイープトウショウの末脚は、どのレースでも光っていた。
父はパワフルなスピードが身上のエンドスウィープ、母の父は怒濤の追込みで凱旋門賞を勝ったダンシングブレーヴ、祖母は鋭い脚でエプソムCを制したサマンサトウショウ。それらの血がスイープトウショウの体内で絶妙にミックスされ、強烈な末脚となって表出していたのだった。
が、届かずに終わることも多いのが、追込み馬の宿命だ。阪神ジュベナイルフィリーズではコンマ2秒だけ及ばずに5着。桜花賞でも遅れて突っ込んできたものの5着。逃げるダイワエルシエーロをただ1頭追い詰めたオークスだったが、相手に4分の3馬身だけ先着を許してしまう。
いつも栄冠は遠かった。
その末脚が、ようやくビッグタイトル獲得へと結実したのは3歳秋のことだ。クビ差+クビ差の3着となったローズSをステップに、2004年・秋華賞へと挑んだスイープトウショウ。そこで持ち前の瞬発力がさく裂する。
桜花賞馬ダンスインザムードが好位から抜け出し、トライアルを制したレクレドール、オークス3着のヤマニンアラバスタ、2歳女王ヤマニンシュクルらも追撃態勢に移る。が、スイープトウショウはまだ馬群の後ろ、大外を振り回すようにして直線へと向かう。またしても届かない位置にいるかと思われた。
そこから、豪脚が火を噴く。あっという間に前の十数頭を交わし、馬場の真ん中を通って先頭に立ったヤマニンシュクルに並びかけていく。2頭の壮絶なデッドヒートはゴールまで続いたが、スイープトウショウが2分の1馬身先着を果たす。
磨き続けてきた末脚を遺憾なく発揮しての、待望の戴冠だった。
さらにスイープトウショウは栄光を積み上げていった。
翌2005年、10番人気2着で大穴をあけた安田記念の勢いに乗って、宝塚記念へと挑んだスイープトウショウは、ここでも11番人気の低評価だったが、それを覆す走りを見せる。タップダンスシチー、ゼンノロブロイ、リンカーンといった牡馬一線級を置き去りにする末脚を繰り出し、ハーツクライの追撃も振り切っての1着。牝馬による宝塚記念勝利は、39年ぶり史上2頭目の快挙だった。
その秋にはエリザベス女王杯を制し、11か月もの長期休養明けとなった2006年・京都大賞典では32秒台の末脚で1着、天皇賞・秋では堂々の1番人気に推されるまでになる。
残念ながらそこからは未勝利に終わったものの、鮮やかな脚で追込み、まさに前を行く馬たちをスイープ=一掃するレースを披露し続けたスイープトウショウは、希代の切れ者と呼ぶにふさわしい存在だった。