ストーリー
海外遠征を行う馬も増えてきた近年の日本馬。しかしハードルが高いことに変わりはなく、本来の力を発揮できなかったり、怪我などで失意の帰国をする馬も多く見られる。そんな中、エルコンドルパサーは海外で自らの能力を出し切った数少ない日本馬の1頭だ。
2歳(現表記)秋にデビューしたエルコンドルパサーは、ダートの初戦を7馬身差、年が明け2戦目を9馬身差で大楽勝。雪の影響でダート変更となった共同通信杯4歳S、そして初の芝挑戦となった重馬場のニュージーランドT4歳Sも制し、無敗でNHKマイルCへと駒を進めた。
まだ良馬場のスピード勝負の経験がなかったエルコンドルパサーだったが、このレースも天は味方し馬場は稍重。好位からレースを進めると、内から差を詰めたシンコウエドワードをゴール前で楽々と突き放して初のG1タイトルを手中にしたのだった。
秋初戦は毎日王冠。快足・サイレンススズカ、同期で無敗の外国産馬・グラスワンダーとの対決に大いに盛り上がった。レースは先手を奪ったサイレンススズカが鮮やかに逃げ切り、エルコンドルパサーは2着に敗退。ここで連勝こそ途絶えたものの、1分45秒台で走破してスピード勝負への対応力も証明した。
次走はマイルCS出走も噂されたが、距離不向きと見られたジャパンCに参戦。しかし2〜3番手追走から直線で先頭に立つと、内のエアグルーヴ、外のスペシャルウィークといった強豪の追撃を許さずに完勝。3歳(現表記)の日本馬として初のジャパンC制覇を成し遂げた。
年度代表馬の座こそ逃したものの、スピード勝負や中〜長距離への適性を見せ、最優秀4歳牡馬のタイトルを獲得。外国産馬でレース選択の幅が限られること、国内最強クラスの力を見せたことなどから、陣営は翌年にフランス遠征、そして異例の長期滞在の決断を下した。
その初戦、5月のイスパーン賞では2着敗退も上々の滑り出し。7月のサンクルー大賞では好位から脚を伸ばし、2着タイガーヒルに2馬身半差をつけ優勝。ヨーロッパの中〜長距離G1における日本馬初優勝の快挙を達成した。
9月のフォワ賞も制すると、エルコンドルパサーは大目標の凱旋門賞に出走する。押し出されるように先頭に立ったエルコンドルパサーは、直線で後続を突き放し悲願達成かと思われた。しかしゴール前でモンジューの急追を受け、半馬身差の2着に屈したのだった。
しかし、一連の好走が高く評価され、春秋グランプリ連覇のグラスワンダー、春秋の天皇賞とジャパンCを制したスペシャルウィークを抑え、国内未出走ながら年度代表馬の座を獲得。後に物議を醸すことになる選出ではあったが、歴史に名を残す名馬によるハイレベルの争いだったのは確かだ。そのため、グラスワンダーとスペシャルウィークがハナ差の激戦を演じた有馬記念での対決が見たかった、と語るファンは現在でも数多い。