ストーリー
競馬に限らず安定した成績を残すには苦手を作らないことが肝要だが、ソングラインは「左回りの1マイル前後」と実力発揮の条件に注文がつくタイプだった。それでも通算17戦7勝、2着3回、3着1回、G1レース3勝を含む重賞5勝と、選択肢に制限がある中で優秀な戦績を残した。
2018年3月に北海道・安平町のノーザンファームでキズナ産駒として母ルミナスパレードから生まれたソングラインは、母系から遡る曾祖母にサセックスSなど英・愛・仏でマイルG1を3勝の名牝ソニックレディを持つ。近親にはロジユニヴァース(日本ダービー)やディアドラ(秋華賞、ナッソーS)ら多数の重賞勝ち馬がいるファミリーで、自身は偉大な曾祖母の生まれ変わりのように活躍することとなる。
2歳11月にデビュー2戦目で勝ち上がったソングラインは、3戦目の3歳初戦で紅梅Sを圧勝する。しかし、続く桜花賞では序盤に不利こそあったものの、コーナーから位置を下げ続けて直線も全く伸びず15着に沈んでしまう。1か月後のNHKマイルCではハナ差の2着と勝利に迫り、夏の関屋記念でも初の古馬を相手に3着と善戦。秋には富士Sで重賞初制覇と見違えるような走りを見せ続け、桜花賞の大敗だけが不可解な記録として残った。
そんな中、暮れの阪神Cは直線で弾けることができず再び15着に大敗。この結果によって右回りの適性に疑問符がつけられ、その後は左回りのレースを選んで出走するようになる。そして、4歳初戦はサウジアラビアの1351ターフスプリントに遠征すると、米G1ホースのカサクリードらとの激闘を制して海外重賞にも勝利。帰国初戦のヴィクトリアマイルはリズムを欠く走りで5着に敗れるも、次戦の安田記念ではNHKマイルCで惜敗したシュネルマイスターに借りを返し、ついにG1ホースの仲間入りを果たした。
4歳の秋以降は体調不良によりレースの回避が相次ぎ、5歳初戦の1351ターフSも出遅れて連覇を逃すなど流れを失ったが、ヴィクトリアマイルで前年の雪辱を果たす復活勝利。さらに安田記念でもヤマニンゼファー(1992年、1993年)、ウオッカ(2008年、2009年)以来となる3頭目の連覇、ヴィクトリアマイルとの連勝もウオッカ(2009年)に続く2頭目という快挙を達成した。
秋のBCマイル遠征を最後に引退し、2023年のJRA賞では最優秀4歳以上牝馬と新設された最優秀マイラーの2冠に選出。歴史的マイラーとしてその名を刻んだ。