ストーリー
2018年3月に北海道・安平町のノーザンファームで誕生したエフフォーリア。父方を遡ればエピファネイアからシンボリクリスエスとシーザリオへ連なり、母方もヒシアマゾンやアドマイヤムーンを擁すなど、血筋には日本競馬において比較的新しい時代の名馬たちが多く見られる。自身も王道路線で活躍し、それらに勝るとも劣らない実績を残した。
血統表の近くにG1ホースがあふれるエフフォーリアだが、育成時代は馬体の見映えこそするもののトモの緩さが目立ち、すぐに活躍できるタイプとは思われていなかったという。それでも、順調に成長して2歳8月にはデビュー戦を迎え、11月の百日草特別まで2連勝。明け3歳初戦の共同通信杯では新馬勝ちから臨む2頭に譲るなど4番人気だったが、好位から2馬身余り抜け出す完勝で潜在能力を発露させる。その迫力は4着キングストンボーイの鞍上で後塵を拝したC.ルメール騎手が、ダービー馬の予感を口にするほどだった。
エフフォーリアは直行した皐月賞でも好位に構えると、開催終盤の荒れた馬場をものともせずに内から3馬身突き抜けて圧勝する。前年に史上最年少で関東リーディングを獲得した22歳の横山武史騎手は、父の典弘騎手とともに3組目の皐月賞父子制覇を果たし、人馬で記念すべきG1初勝利。平成以降に皐月賞を3馬身差以上で制した馬はナリタブライアンとオルフェーヴルの三冠馬しかなく、ダービーへ大きく夢が広がった。
しかし、単勝1.7倍の人気に後押しされながら、夢が叶うことはなかった。エフフォーリアはダービーでも好位からの正攻法で完ぺきに立ち回ったものの、直線で抜け出した所をシャフリヤールに急襲されてキャリア初の黒星。共同通信杯で寄せつけなかった相手に、わずかハナ差で最大のタイトルをさらわれた。
三冠の道を断たれたエフフォーリアは、秋を迎えると天皇賞で古馬に挑戦し、前年に無敗の三冠を達成したコントレイル、最強マイラーのグランアレグリアを撃破。3歳馬として19年ぶりの勝利を手にするとともに、横山武史騎手は史上初となる親子三代での天皇賞制覇を実現した。続く有馬記念のファン投票では歴代最多の26万742票を集めると、レースも堂々の内容で快勝し、2021年の年度代表馬に選出されて現役最強の座を固めた。
ところが、4歳以降は初戦の大阪杯でまさかの9着に大敗するなどスランプ状態に陥り、脚部不安も発症。有馬記念で5着ながら復調の気配を見せた矢先、5歳を迎えた1か月半後には京都記念で心房細動に見舞われ、志半ばで現役を退くことになった。