ストーリー
父子二代の無敗三冠、10年の月日が生んだ必然の大偉業
2017年4月1日に北海道・新冠町のノースヒルズで誕生したコントレイル。後に父ディープインパクトに続く無敗の牡馬クラシック三冠馬となるが、その布石は10年前に打たれていた。母ロードクロサイトは大種牡馬アンブライドルズソングと2005年の米2歳女王から生まれた良血馬。前田幸治ノースヒルズ代表の依頼を受けて渡米し、この母を2011年秋のセールで落札したのが、コントレイルを管理することになる矢作芳人調教師だった。
こうして世に送り出されたコントレイルの歩みは、2019年の秋から加速度的に勢いを増していった。1歳の終わりから2歳春にかけての大事な時期に球節を痛めるも、9月のデビューにこぎつけたコントレイルはノーステッキで2馬身半差の楽勝。単勝1.7倍の圧倒的人気に応えて華々しく初陣を飾り、一気に歴史的偉業への階段を駆け上がっていく。
2か月後の2戦目に東京スポーツ杯2歳Sを選択したコントレイルだが、中間の調整が順調な訳ではなかった。それでもJRA2歳レコードを叩き出して5馬身差の圧勝。さらに3戦目のホープフルSも快勝し、JRA賞では朝日杯フューチュリティSの覇者サリオスに大差をつけて2歳王者に選ばれた。
明け3歳は皐月賞へ直行する異例の戦略が取られた。休養の間には新型コロナウイルスが猛威を振るい、晴れ舞台を無観客で迎えることになる。ただ、静かな環境は悪いことばかりでもなかった。落ち着き十分のコントレイルは後方寄りで流れに乗ると、直線では初対戦のサリオスをねじ伏せて完勝。ダービーでも再びサリオスを寄せつけず二冠を達成する。そして、秋は神戸新聞杯を快勝して菊花賞に臨んだ。距離が課題とされていたコントレイルはアリストテレスの徹底マークに最後まで苦しめられたものの、クビ差で勝利をもぎ取り史上3頭目となる無敗の三冠馬に輝いた。
大偉業を成し遂げ、これでコントレイル時代の幕が開くはずだった。しかし、次走でアーモンドアイとデアリングタクトが待つジャパンCに参戦し、牡牝三冠馬3頭の競演に一役買ったものの、アーモンドアイに敗れて初黒星。年度代表馬の座まで奪われた。
その後も4歳初戦の大阪杯は未体験の道悪でまさかの3着。疲労により宝塚記念を回避すると、復帰戦の天皇賞(秋)では1歳下の皐月賞馬エフフォーリアに敗れ、三冠達成後は3連敗となった。それでも、当初から引退レースとしていたジャパンCで前年の雪辱に挑むと圧倒的な瞬発力で復活。鮮やかに有終の美を飾った。