ストーリー
重賞は3勝ながら史上5頭目となる芝とダートの双方でG1制覇を成し遂げたモズアスコット。英国で14戦無敗のキャリアを築いた最強馬フランケルを父に、米国でダート重賞を2勝したヘネシー産駒のインディアを母に米国ケンタッキー州のサマーウィンドファームで生まれ、2015年のキーンランド・セプテンバーセール(当歳)で矢作芳人調教師により見出された。
モズアスコットは後肢のヒザと喉に問題を抱えていたこともあり、体質が強化されるまで時間をかけて育成された。デビューしたのは同世代がダービーを戦い終えた2週後。3戦目の芝1600mで初勝利を挙げると、ひと息入れて復帰した秋は2か月で3勝をマークし、初白星から一気の4連勝で条件戦を卒業する。
そして、連勝の勢いとともに挑んだ阪神Cはオープン初戦にもかかわらず1番人気の支持を集め、結果は4着に跳ね返されるもレコード決着の流れを勝ちに動いて大きな見せ場を作った。その後、明け4歳初戦の阪急杯でクビ差の2着、続くマイラーズCでもレコード決着の2着と結果を残し、実力が優に重賞級であることを証明する。
しかし、重賞2着で賞金加算こそできたものの、目標の安田記念は除外対象となる。そこでオープン特別の安土城Sで必勝態勢を敷いたが、またしても2着で賞金加算に失敗。安田記念への道は断たれたかに思われた。ところが、直前に回避馬が出たことによって出走チャンスが転がり込み、失意から一転、連闘で安田記念に挑むと激戦に勝利。惜敗続きに終止符を打つと同時に重賞初制覇をG1で飾った。
モズアスコットは夏場の休養から復帰戦のスワンSで2着と上々の滑り出しを見せる。しかし、不利もあって次戦のマイルCSを大敗すると、以降は勝てないレースが続く。そして、6歳のシーズンも現役続行が決まり、矢作師はかねてから温めていたダート挑戦をオーナーに進言。この采配で息を吹き返す。
6歳初戦で根岸Sに出走したモズアスコットは、一筋縄ではいかないダート初戦を軽快に乗り切って鮮やかに復活勝利を挙げると、続くフェブラリーSでも2馬身半差の完勝。史上5頭目となる芝・ダートの二刀流G1制覇を成し遂げた。結局、それが最後の勝利となったものの、マイルCS南部杯ではレースを主導してクビ差の2着。ダート1600mの日本レコード決着を演出し、二刀流ならではのスピードを遺憾なく発揮した。