ストーリー
オウケンブルースリがようやくデビューを果たしたのは3歳の4月。すでに皐月賞はキャプテントゥーレの勝利で終わっていた。
初戦が2着、2戦目が5着と敗れたオウケンブルースリが、初勝利をあげたのは6月のこと。そのときにはもうディープスカイが日本ダービーを制覇、NHKマイルCと合わせての変則二冠を達成していた。
この時点で、オウケンブルースリのその後を予見できた者など誰もいなかっただろう。だが、伝説のカンフー・ヒーローを名前に戴くこの馬は、ここから驚異的な上昇カーブを描きながらターフを駆け抜けていく。
差して4馬身ちぎるという強い勝ちかたで未勝利を脱出したオウケンブルースリは、続く500万下・生田特別で1番人気に推される。これに応えてクビ差1着で連勝を飾ると、夏の新潟、1000万下・阿賀野川特別でも1番人気。ここも2馬身半の差し切りで突破し、連勝を3に伸ばしたのだった。
にわかに「菊花賞へ向けて現れた、最大の上昇馬」との評価が高まったオウケンブルースリに、早速最大の試金石となる場が与えられた。神戸新聞杯だ。ここには春のヒーロー・ディープスカイが出走、NHKマイルC2着、日本ダービー3着のブラックシェルも待ち受けていた。
オウケンブルースリにとっては初の重賞挑戦、さすがに世代トップ級の壁は分厚く、1着ディープスカイ、2着ブラックシェルに後れを取っての3着と敗れたオウケンブルースリ。それでも着差はクビ+半馬身、メンバー中最速の上がりで追い込んできたのだから、十二分に可能性を示すことはできたといえるだろう。これなら菊花賞にも有力馬の一角として出走できそうだ。
だがその後、ディープスカイが天皇賞(秋)へと進み、ブラックシェルが屈腱炎で戦線を離脱したことで、オウケンブルースリの立場は大きく変わることとなる。
迎えた第69回菊花賞。オウケンブルースリは1番人気でゲートに収まった。皐月賞3着、セントライト記念2着のマイネルチャールズ、日本ダービー2着のスマイルジャック、セントライト記念勝ち馬ダイワワイルドボアよりも、オウケンブルースリの潜在能力と、神戸新聞杯で強敵2頭を追い詰めた怒涛の末脚はファンの心に響いたのだ。
レース内容も、見事その期待に応えるものだった。3コーナー過ぎで一気にベースアップ、後方から馬群の外を進出して直線入口では先頭を射程に捉える。そこからも力強く伸びて、最後は追い込んだフローテーションに1馬身4分の1差でゴール。凄まじい上昇力で頂点へとたどり着いたのである。
その後も、豪快な追込み勝ちを決めた4歳時の京都大賞典やウオッカにハナ差まで迫ったジャパンCなど、オウケンブルースリは古馬中長距離重賞の常連として活躍していくことになるのだった。