ストーリー
2011年に北海道・日高町の戸川牧場で誕生したモーリス。母メジロフランシス(その父カーネギー)は1928年に輸入された牝系から名門・メジロ牧場で育まれた。父スクリーンヒーローの祖母も1980年代に重賞5勝と活躍したダイナアクトレス。日本競馬に息づく血で世界を制した。
モーリスは2歳10月のデビュー戦をレコード勝ちし、暮れに2勝目を挙げてオープン入りと早くから能力を見せていたが、明け3歳は4連敗と勝ちあぐねて夏前に休養入り。その間に美浦の堀宣行厩舎へ移籍すると、弱さのあった背腰のケアを最優先に立て直しが図られ、4歳1月の復帰戦から怒とうの快進撃を開始する。
1000万下(現2勝クラス)から2連勝したモーリスは、オープンに再昇級の初戦でダービー卿CTに挑戦。ダイワメジャーのレースレコードを0秒1更新して重賞初制覇を飾る。2か月後の安田記念ではG1初挑戦ながら1番人気の支持を集め、先行策からヴァンセンヌの猛追をクビ差しのいで一気にマイル路線の頂点に立った。
秋初戦は前哨戦を使わずマイルCSへ直行。その影響で4番人気と評価も下がったが、中団から突き抜けて史上6頭目となる同一年のマイルG1春秋制覇を成し遂げる。そして、次戦では香港マイルへ遠征。香港競馬史上、最高レーティングのエイブルフレンドとの対決に注目が集まる中で決戦を制し、4歳は6戦全勝で年度代表馬に輝いた。
「種牡馬としての価値を高められるレース選択」を念頭に迎えた5歳シーズンは、ドバイ遠征の計画を蹄の不安で見送り、再び香港に渡ってチャンピオンズマイルから復帰する。香港マイルよりも手薄な相手関係で楽勝したモーリスだが、帰国後は安田記念でまさかの2着に敗れて連勝がストップ。2000mで戦うための試金石とした札幌記念でも、稍重の発表以上に荒れた馬場の影響からか2着に敗れてしまう。
それでも、次戦の天皇賞(秋)では馬場の中央から堂々と抜け出す快勝で距離の壁をクリア。続く香港Cを引退レースとして三たび香港に遠征すると、内ラチ沿いから3馬身突き抜ける圧勝劇で6度目のG1制覇を飾り、惜しまれながら現役に別れを告げた。
種牡馬入りしたモーリスは2020年デビューの初年度産駒が重賞3勝の好スタート。豪州にもシャトル派遣されて産駒の出走機会を拡大するなど、成功への足場を着々と固めている。