ストーリー
曾祖母がモデル(モデルスポート)で祖母がアクトレス(ダイナアクトレス)、そして母はヒロイン(ランニングヒロイン)、自身はヒーロー。スクリーンヒーローの母系にはそんな名前がずらり並んでいるが、スクリーンヒーローはその名の通り、ヒーローたる活躍を見せた馬だった。
この馬のデビューは06年。翌07年に3戦目の未勝利戦を勝ち、5戦目には500万条件を勝ち上がったものの、G1のトライアル・スプリングSでは5着、プリンシパルSでは7着と出走権獲得には及ばず、春はクラシック未出走に終わった。しかし、夏にラジオNIKKEI杯で14番人気2着に好走すると、新潟記念16着を挟んでセントライト記念で3着。トライアル3度目の挑戦で、ついにラスト一冠への切符を手中にした。
祖母ダイナアクトレスはオークス3着、秋はローズS取り消しで不出走に終わったが、古馬になって牡馬相手に重賞4勝。スクリーンヒーローも、秋以降の活躍が大いに期待されていた。
ところが、セントライト記念のレース後に骨折が判明。菊花賞断念はもちろん、翌年夏まで約1年もの休養を強いられることになってしまったのだった。
それでも、本格化のきざしを見せていたスクリーンヒーローは、アクシデントを楽々と乗り越えてみせた。復帰初戦の1000万条件をクビ差で制し、格上挑戦の札幌日経オープンでは2着に好走。オクトーバーSではジャガーメイルにハナ差惜敗を喫したが、続くアルゼンチン共和国杯でそのジャガーメイル、そして自身が出走できなかった菊花賞の2着馬・アルナスラインと対戦することになった。
好スタートから中団に控え、道中はピタリと折り合って5番手追走。直線では他の有力馬より先にぐいぐいと脚を伸ばし、大逃げを見せていたテイエムプリキュアを残り100mで捕らえると、ジャガーメイル、アルナスラインを従える快勝で重賞初制覇を達成した。
続く舞台は、ついにたどり着いたG1・ジャパンC。出走メンバーはこの年のダービー馬・ディープスカイ、秋の天皇賞を制したウオッカを筆頭に強敵揃い。スクリーンヒーローは9番人気の評価にとどまっていた。
レースは5番手を追走し、前にはウオッカとマツリダゴッホ、横にメイショウサムソン、そして直後にはオウケンブルースリにアサクサキングス。前も後ろもG1馬ばかりの集団で、もっとも楽な手応えで直線に向いたのはなんとスクリーンヒーローだった。直線の坂で追い出されると力強く伸び、外・ディープスカイの追撃を半馬身振り切って先頭でゴール。祖母ダイナアクトレスが87年に9番人気で3着好走を見せた一戦で、孫は同じ9番人気から見事に勝利を手中にしてみせたのだった。
その後は勝ち星に恵まれなかったスクリーンヒーローだが、並み居る強豪を斬り捨てたジャパンCの強さは間違いなく本物。その産駒から、いったいどんな名前の活躍馬が出てくるのか楽しみに待ちたい。