ストーリー
エイシンヒカリは国内でG1未勝利ながら海外で2勝した稀有な名馬。北海道・新ひだか町の木田牧場で2011年に誕生した芦毛馬は、1歳上のダービー馬キズナらとともに父ディープインパクト、母の父ストームキャットという数々の成功を生む配合の先例にもなった。
体質が弱く仕上がりが遅れたエイシンヒカリだが、3歳春の初陣では既走馬を相手に好位から5馬身抜け出すセンスを見せた。2戦目には積極性が増して3馬身差で逃げ切り。ここから逃げを型にして無傷のまま条件戦を卒業する。
そして、オープン初戦のアイルランドTは最終コーナーで15馬身ほどの大逃げ。直線では東京競馬場のコースの内側から外側に向けて大きくよれ、ゴールでは外ラチについてしまう。粗削りでロスの大きな内容ながらも3馬身半差を守った底知れぬ能力に競馬ファンは沸き立った。
しかし、その分だけマークも厳しくなり、重賞初挑戦のチャレンジCでは後続も離れず追走し初黒星を喫する。それでも、4歳初戦の都大路Sで武豊騎手と初コンビを組むと、前半4ハロン46秒9(3ハロン35秒0)、中間11秒9、後半4ハロン46秒9(3ハロン35秒0)と、1800mを合わせ鏡のように精密なラップで逃げ切り。ひと皮むけた姿を披露すると、続くエプソムCでの重賞初制覇から秋の毎日王冠まで3連勝した。
実力が明らかとなったエイシンヒカリはG1戦線に挑むと逃げ馬の宿命を背負うことになり、初挑戦の天皇賞(秋)ではハナを叩かれて2番手から流れに合わせるも完敗。その一方、次戦の香港Cではハイペースの逃げを打ち、追い掛ける初対戦の外国勢たちを翻ろうしてG1制覇を成し遂げた。
明けて5歳初戦はフランスのイスパーン賞に遠征。2番手からとなるも10馬身の大差を開く圧勝劇でG1連勝とする。続くプリンスオブウェールズSでは圧倒的人気に推されて徹底マークにあい、アスコット競馬場のタフな舞台設定も相まって最下位。帰国後の天皇賞(秋)、2度目の香港C遠征いずれも2桁着順に沈み引退を迎え、2017年に種牡馬入りした。