ストーリー
後に世代ナンバー1の称号を獲得することになるディープスカイ。が、明け3歳を迎えた2008年1月の段階では、いまだ勝利なし。この馬に注目する者は少なかったに違いない
前年、2歳10月に京都の芝1400m戦でデビューしたディープスカイだったが、そこでは4着に敗退。その後も2着、2着、2着と勝ちあぐねて年を越すことになる。3歳初戦は9着と大きく期待を裏切り、ようやく初勝利をあげたのは6戦目のことだった。これで軌道に乗るかとも思われたが、500万下ではまたも2着に終わる。
父アグネスタキオンは、ロジック、ダイワスカーレット、アドマイヤオーラなど有力馬を次々と送り出し、サンデーサイレンスの後継者争いをリードする存在。当然この世代にもキャプテントゥーレ、リトルアマポーラ、レインボーペガサスと牡牝に素質馬がそろっていた。そんな中でディープスカイは“出遅れた存在”になろうとしていた。
初の重賞挑戦となったアーリントンCで3着と健闘したディープスカイは、続く毎日杯で一気に注目を集めることになる。
同じアグネスタキオン産駒、前走・デビュー戦で後続を7馬身もちぎり捨てたアドマイヤコマンドが1番人気に推された、このレース。ディープスカイは6番人気に過ぎなかったが、中団から鋭く脚を使い、アドマイヤコマンドを2馬身半突き放す快勝で重賞初制覇を果たすのだ。
完全に自信を身につけたディープスカイは、続くNHKマイルCで、さらに素晴らしい走りを披露した。
1番人気の支持を背負ったディープスカイは、後ろから3頭目の位置でじっくりと待機。4コーナーから直線にかけては馬群の中に突っ込むと、そこから力強く伸びる。そして、先に抜け出したブラックシェルをとらえ、1馬身4分の3差で1着ゴール。鮮やかにGIタイトルを獲得したのである。
ディープスカイの勢いは、これで終わりではなかった。果敢にも日本ダービーへ挑戦、1番人気にふさわしいレースを見せる。
今回も直線を向いたところでは後方集団の内。そこから外へと持ち出されると、圧倒的ともいえるラストスパートで見る見るうちに前を抜き去っていく。最後は好位からの粘り込みを図るスマイルジャックを1馬身半差し切っての勝利。史上2頭目となるNHKマイルCと日本ダービーの連覇を達成して、世代ナンバー1の座を確かなものとしたのだった。
その後も、天皇賞・秋では3着、ジャパンCでは2着、4歳になって安田記念2着、宝塚記念3着と、勝てないまでもウオッカやドリームジャーニーらと壮絶な戦いを繰り広げ、レースを盛り上げたディープスカイ。志半ばで故障・引退となったのは残念だったが、急逝したアグネスタキオンの後継として、その確かな末脚を次代につなげる役割を担うことが期待されている。