ストーリー
エルコンドルパサーが日本調教馬として史上最高のレーティング134を得た1999年から20年後、2019年3月に北海道・安平町のノーザンファームで父キタサンブラック、母シャトーブランシュの間に生を受けたイクイノックス。それから4年の月日をかけ、日本競馬の歴史を塗り替える最強馬へと成長を遂げた。
イクイノックスの父キタサンブラックはスピードとスタミナ、成長力を武器にG1レース7勝、2年連続JRA年度代表馬に輝く名馬だった。その初年度産駒であるイクイノックスが2歳8月にデビュー勝ちした時点では、当然のように産駒の特徴は判然としていなかったが、2戦目の東京スポーツ杯2歳Sを上がり3ハロン32秒9という圧巻の末脚で重賞初制覇。父のイメージになかった瞬発力を披露するとともに、産駒として初のタイトルも贈った。
出世レースを制してクラシックの有力候補に名を連ねたイクイノックスだが、体質的な弱さもあって東スポ杯2歳Sから皐月賞は5か月の休養明けという異例の臨戦となった。すると、皐月賞はジオグリフに差し切られて1馬身差の2着、続くダービーでもドウデュースを捕らえ切れずクビ差で惜敗。3歳春の時点では完成度の差で同世代に後れを取っていた。
しかし、ひと夏越して古馬に挑んだ天皇賞(秋)では、大逃げのパンサラッサを上がり32秒7の豪脚で差し切りG1初制覇。鮮烈なレースぶりは世界の競馬メディアでも話題を呼ぶと、暮れの有馬記念でも中団から4角先頭の横綱相撲でG1連勝を決め、詰めの甘さに泣いた春から見違えるような逞しさで年度代表馬の座をもつかみ取った。
3歳までは末脚が切り札だったイクイノックスだが、4歳では父の特長も再現できるようになって完全無欠のサラブレッドへと進化する。その初戦、ドバイシーマクラシックでは初めて逃げを打つと直線半ばで7、8馬身差を開き、勝利を確信したC.ルメール騎手が残り100m付近で追う手を止めながらレコード勝ち。従来の記録を1秒も短縮する破格の内容を受けて世界ランキングの首位に躍り出た。
帰国後は国内のレースに専念して宝塚記念も制すと、天皇賞(秋)では超ハイペースに乗り込んで楽々と1分55秒2のJRAレコードで史上3頭目の連覇を達成。引退戦のジャパンCも先行策から4馬身差の圧勝を飾り、G1レース6勝、2年連続の年度代表馬に輝いた。また、ドバイシーマクラシックから「ロンジン・ワールドベストレースホースランキング」の首位も守り抜いて世界王者となると同時にレーティング135を獲得。通算獲得賞金の22億1544万6100円も日本歴代最高を記録し、名実ともに史上最強の座に就いた。