ストーリー
2019年5月、北海道は安平町のノーザンファームで父ハーツクライ、母ダストアンドダイヤモンズの間に誕生したドウデュース。その名は40対40の同点状態を表すテニス用語に由来しているが、自身の競走生活も栄光と挫折がぶつかり合う波乱に満ちたものとなった。
ドウデュースはデビュー3連勝で朝日杯フューチュリティSを制し、JRA賞最優秀2歳牡馬を受賞。後に世界ランキング首位となるイクイノックスを下したダービーでは2分21秒9の驚異的なレースレコードを叩き出すなど、3歳前半までは世代をリードするだけでなく、日本競馬を背負って立つ逸材と評価を高めていくばかりだった。
ところが、フランス遠征を敢行した3歳秋から戦歴の乱高下が止まらなくなる。前哨戦のニエル賞、目標の凱旋門賞ともども初の道悪に対応できず、とりわけ凱旋門賞では19着に沈む惨敗。天皇賞(秋)と有馬記念を連勝して年度代表馬と最優秀3歳牡馬の二冠に輝くイクイノックスとは大きく明暗を分けた。
4か月の休養を経て再始動した4歳は、初戦の京都記念こそひと捲りの楽勝劇でダービー馬の実力を再認識させる。しかし、次戦で狙ったドバイターフは現地入り後に左前肢跛行を発症し出走を断念。立て直して迎えた天皇賞(秋)ではレース当日に主戦の武豊騎手が負傷して乗り替わりとなり、ダービー以来の対戦となったイクイノックスにジャパンCまで連敗と波に乗れない状態が続く。武騎手が復帰した有馬記念は本来の走りを取り戻して快勝するも、年度代表馬の座は再びイクイノックスの手に落ちた。
明けて5歳も雪辱を期したドバイターフは出遅れや直線の不利、帰国初戦の宝塚記念も道悪と不運が重なり連敗。残り3戦をもって引退と発表されて臨んだ天皇賞(秋)は、1歳下の三冠牝馬リバティアイランドに1番人気を譲って2番人気に甘んじるも、超スローペースを物ともしない豪脚で2歳から4年連続のG1制覇を達成。続くジャパンCも鮮やかに追い込みを決めて連勝し、主戦不在に泣いた1年前の借りを返すとともに復権した。
ラストランの有馬記念はファン投票で歴代最多の47万8415票を集めて堂々の1位。史上3頭目の秋古馬三冠へ期待は大きくふくらんだ。ところが、本番2日前に右前肢の跛行によって回避。競走生活は最後まで波乱のまま幕を下ろすことになった。それでもなお、秋の鮮烈なG1連勝で年度代表馬に輝き、大きな勲章を手土産に種牡馬入りした。