ストーリー
北海道千歳市の社台ファームで2019年2月に誕生したスターズオンアース。日本ダービーなど二冠馬の父ドゥラメンテがダイナカールに遡るオークスに縁の深い名門牝系の出身だった一方、英国で生まれた母サザンスターズはオークス馬ソウルスターリングと姉妹、両馬の母も仏オークス馬スタセリタという頂点を極めるための血が凝縮されていた。
スターズオンアースは2歳夏の初陣から長めの距離が意識され、1800mを連戦して2戦目に勝ち上がった。しかし、距離を1600mに短縮した3戦目の自己条件では後にマイルCSを制すナミュールの瞬発力に一蹴されて3着。明け3歳からは1600mの重賞を連戦するも、モタれる癖を出すなどクビ差の惜敗を続けた。
それでも、重賞2着での賞金加算に成功したスターズオンアースは桜花賞の出走資格を確保し、川田将雅騎手との新コンビで本番に臨んだ。崩れなく走ってきた一方で勝ち切れずに来たため、単勝14.5倍の7番人気と伏兵扱いだったが、この日は中団から狭い馬群をこじ開けるように鋭伸。それまでのもどかしさを払しょくする走りで桜冠を手に入れた。
ただ、続くオークスは待ちに待った舞台ながらも3番人気に留まる。桜花賞が9着まで0秒2差という大混戦だったうえ、川田騎手は忘れな草賞勝ちのアートハウスを選択して乗り替わり、さらに大外18番の枠順も評価に影響した。しかし、祖母スタセリタも仏オークス制覇に導いた縁があるC.ルメール騎手を新たな鞍上に迎えたスターズオンアースは、中団で流れに乗ると強烈な末脚を引き出されて快勝。桜花賞、オークスとも初騎乗の騎手による勝利という史上初の快挙を達成し、牝馬三冠へ大きく視界が開けたかに思われた。
ところが、これが最後の勝利となってしまう。オークス後はもともと抱えていたという両前肢の骨片除去手術に踏み切り、秋華賞には間に合ったもののゲートに失敗して3着。JRA賞最優秀3歳牝馬こそ受賞したが、左前肢の繋靭帯炎で翌春まで休養を余儀なくされた。
そして、4歳初戦の大阪杯もゲートが今ひとつでジャックドールの逃げ切りを許し、ハナ差及ばず惜敗。蹄の不安でヴィクトリアマイル以来6か月半ぶりの実戦となったジャパンCでは、日本史上最高パフォーマンスで圧勝したイクイノックスの3着など、4戦したG1で全て入着と上位争いを演じながらも運には恵まれなかった。現役を続けた5歳は脚部不安がありながらもレースを全うし、ジャパンCを最後に名門の血を継ぐべく繁殖入りの時を迎えた。