ストーリー
かつて、エイシンプレストンが香港でG1レースを3勝し、国内以上に顕著な活躍でシャティン競馬場の申し子と言われたが、グローリーヴェイズも香港ヴァーズを2勝するなど、日本調教馬として最多(2023年現在)の入着4回を記録。それに比肩する実績を築いた。
グローリーヴェイズの「ヴェイズ」と香港ヴァーズの「ヴァーズ」は日本語表記だと異なっているが、英語表記ではどちらも壺や花瓶を意味する“Vase”になる。香港ヴァーズの優勝馬に贈呈される特製の大きな花瓶が、彼ほど似合う馬もいなかっただろう。
グローリーヴェイズは2歳10月にデビュー勝ちしたが、体質的な弱さから間隔を空けながらの競走生活となる。初陣から4か月後の3戦目には、きさらぎ賞で先頭に顔をのぞかせながらも差し返されて惜敗。高い素質を感じさせながら、賞金不足で皐月賞にもダービーにも縁のない春を送った。それでも、夏場には古馬を破ってオープン入りを果たし、菊花賞では不利な大外枠から5着に食い込んで実力の一端を示す。
3か月後には4歳初戦の日経新春杯で重賞初制覇を飾ると、次戦の天皇賞(春)ではクビ差の2着に惜敗。菊花賞で約3馬身差をつけられたフィエールマンに際どく詰め寄り、G1でも通用する地力を証明した。その後、自己最長の半年の休養から復帰した京都大賞典では折り合いを欠き、不利も受けるなど完敗したものの、2か月の走り慣れた間隔で挑んだ香港ヴァーズでは馬群の中から一気に3馬身余り突き抜ける圧巻の勝利。レースレコードを1秒45も更新する会心の走りでG1初制覇を飾った。
少ない実戦の中で着実に階段を上っていたグローリーヴェイズだが、5歳の2020年はコロナ禍でドバイシーマクラシックが現地入り後に開催中止。予定を大きく狂わされて立て直しには秋まで時間を要し、京都大賞典で久々の勝利を手にすると、次戦では3連覇も可能だった香港ヴァーズではなく、アーモンドアイとコントレイル、そしてデアリングタクトの三冠馬対決に沸くジャパンCに挑戦。果敢な先行策から直線で大きな見せ場を作り、2馬身圏内の5着に粘り込んだ。
翌春には久々に香港へ遠征し、自身には距離不足のクイーンエリザベス2世C(2000m)でラヴズオンリーユーから3/4馬身差の2着に善戦。シャティン競馬場との相性の良さを改めて印象づけると、その暮れの香港ヴァーズでは豪快に大外一気を決めて2年ぶりの2勝目を手にした。結局、これが最後の白星となり、現役を続行した7歳は衰えも見えはじめて3戦しかできなかったものの、引退戦の香港ヴァーズでは3着を確保。シャティン競馬場で見せる雄姿は最後まで輝きを失うことがなかった。