ストーリー
これまで40頭以上ものGIホースを送り出している大種牡馬サンデーサイレンス。その第1号、栄えあるGI初勝利産駒となった馬こそフジキセキである。
1992年、フジキセキはサンデーサイレンス初年度産駒の1頭として生を受けた。母は米G1で4着のあるミルレーサー、その父は仏ダービー馬ルファビュリュー。名牝ベガの妹やダイナアクトレスの娘など、そうそうたる同期の中では決して目を引く血統ではなかったものの、デビューするや一気にフジキセキは注目を浴びる。
初戦は8月・新潟の芝1200m戦、2番人気のフジキセキはスタートで後手を踏む。が、すぐに3番手につけると、直線では他の出走馬をみるみる引きちぎっていく。結果は8馬身差、タイムは古馬900万下に匹敵するレベル。圧勝でデビューを飾ったフジキセキは、早くも「翌年のクラシック候補の1頭」という称号を得ることになるのだった。
2戦目は10月の阪神、芝マイルでおこなわれたオープン特別のもみじSだ。ここでもフジキセキは、力強く抜け出す競馬であっさりと勝利をつかむ。後の日本ダービー馬タヤスツヨシを寄せ付けず、叩き出したタイムは2歳コースレコードとなる1分35秒5。またも圧勝である。
そして第46回朝日杯3歳S。新馬と京都3歳Sを連勝してきた外国産馬のスキーキャプテン、新潟チャンピオンのトウショウフェノマなど一気に相手は強化されたが、フジキセキは単勝オッズ1.7倍の断然人気に推され、その支持に応えてみせた。これまで同様先行策から素早く抜け出し、スキーキャプテンの追込みをクビ差退けてのGI制覇だ。
この勝利により、フジキセキはJRA賞最優秀3歳(現2歳)牡馬のタイトルを満票で獲得。「クラシック候補の1頭」から「断然のクラシック候補」へと、その評価は昇格することになったのだった。
3歳初戦の弥生賞も快勝したフジキセキ。順調であれば、確かに3歳クラシック戦線で主役の座を担い、多くの栄冠を勝ち取ったことだろう。が、皐月賞を目前にして屈腱炎を発症し、電撃的な引退という道をたどる。わずか4戦4勝、あまりにも短い現役生活に早々とピリオドを打ち、種牡馬として歩み始めることになったのだ。
ターフでフジキセキが見せた圧倒的なパフォーマンスは、産駒にもしっかりと受け継がれた。ダート王カネヒキリ、スプリントGIの覇者ファイングレイン、エイジアンウインズやコイウタといった活躍馬を続々と輩出し、またシャトル種牡馬として海外でも供用され、そこで生まれた産駒サンクラシークはドバイ・シーマクラシックの勝ち馬となった。
競走馬として、そしてサンデーサイレンスの後継種牡馬として、父の名を最初に高めたフジキセキ。いまなお「サンデーサイレンスの最高傑作」とも呼ばれる存在である。