ストーリー
主に中長距離路線で何頭ものスーパーホースを輩出し続けた大種牡馬サンデーサイレンス。だが、名スプリンター/名マイラーも意外と数多く送り出している。産駒として初めてマイルCSを制したジェニュイン、短距離の女王ビリーヴ、香港マイルを勝ったハットトリック、名マイラーのダイワメジャー、そして3頭の桜花賞馬たち……。
中でもデュランダルは、サンデーサイレンスらしい鮮やかな瞬発力でこの路線を牽引した存在として記憶される1頭である。
デュランダルの母はダート1000mと芝1200mで計5勝をあげたサワヤカプリンセス、全兄サイキョウサンデーは1200mの重賞・中日スポーツ賞4歳Sを勝利、姉マルカサワヤカも短距離戦を主戦場としていた。当然、デュランダル自身も短距離路線を歩み、長期休養を挟みながらもデビューから5戦4勝、3歳秋にはオープン入りを果たす。まずは順調な滑り出しといえただろう。
ただし、強豪ひしめく重賞戦線で戦うには、まだ“たくましさ”が足りなかった。
2002年の第19回マイルCSでは、混戦の中、後方からよく差を詰めたものの10着。明けて2003年・4歳初戦のニューイヤーSでオープン勝ちを収めたが、中山記念では9着、秋になってセントウルSでは3着という結果だ。
が、セントウルSで初めてデュランダルの手綱を任された池添謙一騎手は、この馬の持つ潜在能力の高さと“切れる”という特性を感じ取っていたようだ。続く第37回スプリンターズSで、乾坤一擲の騎乗を見せる。
セントウルS1着のテンシノキセキが軽快に逃げ、それを女王ビリーヴが交わす。5連勝中の素質馬レディブロンド、安田記念2着のアドマイヤマックスらも追ってきた。
これら人気上位4頭を大外からまとめて差し切ったのがデュランダルだった。道中最後方からの直線一気で、鮮やかすぎるほどのGI初制覇を果たしたのである。
さらに第20回マイルCSでも、デュランダルは持ち前の瞬発力を見せつけた。スプリンターズSのレースぶりがあまりに極端だったため「もう一度は無理だろう」と5番人気にとどまっていたのだが、その評価をあざ笑うかのような脚を披露したのだ。
道中は例によって後方待機。直線に入ってやおらエンジンを噴かすと、他の馬とは次元の違う末脚が爆発する。またも大外一気でGI連覇を果たし、この年のJRA賞最優秀短距離馬に選出されることになるのだった。
以後も、裂蹄や蹄葉炎など度重なる病気に悩まされながら、5歳時には高松宮記念2着、スプリンターズS2着、マイルCS連覇、香港マイルでは僅差の5着、6歳時には10か月ぶりの実戦となったスプリンターズS2着など、一流の走りを見せ続けたデュランダル。デュランダルとは、英雄ローランが持つ切れ味鋭い聖剣のこと。その名にふさわしい切れ味を武器とした名短距離馬であった。