ストーリー
多くの場合、ステイヤーは遅咲きである。そして、ある日を境にして一気に上昇曲線を描き、頂点へと上り詰める。マヤノトップガンも、まさにそんなタイプの競走馬だった。
デビューは3歳1月。この時点でも馬体は成長しきっておらず、マヤノトップガンはダート戦ばかりを使われることになる。5着に終わった新馬戦以後、5月までの成績は、3着、3着、1着、3着、3着、1着。
ターフはサンデーサイレンスの初年度産駒であるジェニュインが皐月賞を、タヤスツヨシが日本ダービーを制して沸いていたが、まだマヤノトップガンは「ダートで着を拾っている馬」に過ぎなかった。
ところが夏を迎え、芝を走れるだけの基礎体力を身につけたマヤノトップガンは、たちまち素質の高さを示すようになる。900万下特別を勝ち、神戸新聞杯と京都新聞杯でも連続2着をキープ。一気に菊花賞戦線の有力馬の位置に躍り出たのである。
まさに、突如の飛躍。その勢いは、本番・菊花賞でも持続した。
好位を悠々と追走したマヤノトップガンは、4コーナーで早くも先頭に並びかけ、直線では後続を突き放してみせる。スタミナあふれるステイヤーならではの強気のレースぶりだ。結局、先行各馬はマヤノトップガンについていくことはできず、後方からトウカイパレスとホッカイルソーが追い込んできたものの、時すでに遅し。マヤノトップガンは2着に1馬身4分の1差をつけて、クラシック3冠目・菊花賞のタイトルを手にしたのであった。
それだけにとどまらない。暮れの有馬記念にも出走したマヤノトップガンは、前年の三冠馬ナリタブライアン、女傑ヒシアマゾン、秋の天皇賞を勝ったサクラチトセオー、宝塚記念2着のタイキブリザードら、古馬の一線級を相手に逃げ切り勝ちを演じてみせた。
数か月前にはコツコツとダート条件戦を走っていた馬が、頂点を極めたのである。
古馬になってからもマヤノトップガンは、一流の成績を残した。
阪神大賞典では、それまで調子を落としていたナリタブライアンが復活を見せ、これとマッチレースを演じての2着。
天皇賞・春ではマークされる展開となって5着に敗れたが、宝塚記念では堂々と抜け出して3つ目のGIタイトルを手にする。
秋シーズンには、サクラローレル、マーベラスサンデー、バブルガムフェローらと好勝負を繰り広げてファンを沸かせた。
そして5歳。阪神大賞典では、59kgを背負いながら一気にマクって、さらに2着を3馬身半も突き放すレースで快勝。天皇賞・春では、勝利目前のサクラローレルを瞬時にして交わす豪脚を披露し、従来のレコードを2秒以上も縮める3分14秒4の好タイムで制覇。
ダート1200mで現役生活を始めた馬が、芝の3000mGIを制し、3200mでも圧勝。その上昇カーブを、誰が想像できただろうか。