ストーリー
活躍馬の弟や妹は、デビュー前からファンの期待を集めるもの。ファインモーションもそんな1頭で、97年のジャパンCを制したピルサドスキーの半妹という良血馬だ。しかも、そのジャパンCで叩き合いの末2着に敗れたエアグルーヴの伊藤雄二厩舎所属で武豊騎手となれば、その注目度といえばちょっとした良血馬の比ではない。
そんなファインモーションのデビュー戦は01年、2歳12月の芝2000m新馬戦。まだ一度たりともレースで走ったことがないにも関わらず、単勝はなんと1.1倍。新馬としては少々過大とも言える注目の集まる中、4馬身差の逃げ切りで鮮やかにデビュー戦を勝利を飾ったのだった。
当然、クラシックへ向けてファンの期待は高まったが、骨折もあって春は全休。しかし、夏の函館で復帰すると、松永幹騎手(現調教師)を背に500万条件、そして札幌の阿寒湖特別(1000万)をともに5馬身差で圧勝。秋へ向け順調な再スタートを切っていった。
重賞初挑戦はローズS。桜花賞1、2着のアローキャリーとブルーリッジリバー、オークス3着のユウキャラットなど春の実績馬も出走していたが、ファインモーションは好位から馬なりのまま抜け出し完勝を収めた。
この勝利で同世代の牝馬に敵なしを印象づけたファインモーション。秋華賞ではデビュー戦で騎乗した武豊騎手に手綱が戻り、単勝オッズは新馬戦と同じ1.1倍。レースではその圧倒的な支持に応えるかのように、楽々と後続を突き放し3馬身半差の圧勝となった。
続くエリザベス女王杯は、重賞としては初の古馬相手。しかし、既に「現役最強か?」との声まで聞かれ始めたファインモーションはまったく問題にせず、スローペースの3番手から上がり33秒2の脚で抜け出し、破竹のデビュー6連勝を飾ったのだった。
この頃、同世代の牡馬ではシンボリクリスエスが天皇賞(秋)を制し、ジャパンCでも日本馬最先着となる3着に好走。有馬記念での3歳牡牝最強対決にファンの注目は集まった。
迎えた有馬記念は、シンボリクリスエスを抑えて1番人気。しかしレースでは、一旦は2番手で折り合いをつけたかに見えたものの、大観衆の待つスタンド前で行きたがって逃げる形となり、2週目の直線で失速。シンボリクリスエス、タップダンスシチーから離れた5着に敗れ、ついに連勝は途絶えてしまった。
以前から行きっぷりが良すぎる面もあったファインモーションだが、この有馬記念を境にそれがレースに悪影響を及ぼすことが増えくる。翌03年秋のマイルCSでは、距離短縮と中団待機の競馬でデュランダルの2着に好走を見せたものの、その後は03年阪神牝馬S、04年札幌記念の2勝を上積みするのみに留まり、04年のマイルCS9着を最後にターフを去っていった。
しかし、最優秀3歳牝馬のタイトルを重賞した03年秋の走りはまさに圧倒的。繁殖入り後はまだ子宝に恵まれていないが(08年現在)、血統背景からもその高い能力を受け継いだ産駒の誕生が待たれるところだ。