ストーリー
安定したレースと圧倒的な勝利を連ね、パーフェクトと称された馬は数多い。が、牝馬に限ればメジロラモーヌほどその称号にふさわしい存在はいないだろう。
1983年、青鹿毛の品のいい馬体、額には大きな流星が走る見栄えの良さをともなって北海道・メジロ牧場で生まれたメジロラモーヌは、1985年秋にデビューを迎え、走るたびに評価を高めていくことになる。
新馬戦では2着に大差をつけ、2戦目・京成杯3歳Sでは牡馬のダイシンフブキに屈して4着に終わるも、寒菊賞をあっさりと勝ち、テレビ東京賞3歳牝馬Sではダイナフェアリーを並ぶ間もなく差し切って3馬身半差の圧勝。結局4戦3勝でこの年の最優秀3歳(現2歳)牝馬に選出される。
明けて1986年初戦のクイーンCでは4着に敗れたが、続く4歳牝馬特別、鞍上に河内洋騎手を迎えてからが、メジロラモーヌの“パーフェクト街道”の始まりだった。
まずはこの桜花賞トライアル、完全な勝ちパターンに持ち込んだチュウオーサリーを、およそ届きそうもない位置から怒涛の末脚で差し切る。本番・桜花賞も豪快な差し切りで1番人気に応えてみせた。
その後メジロラモーヌはオークスに直行することはせず、なんと3週後のオークストライアルに出走、ここも鮮やかに勝ってみせる。直線の坂を駆け上がりながら抜け出し、同じように伸びたダイナアクトレスを最後に1馬身半ねじ伏せる完勝レースだった。
オークスも磐石。中団馬群の真ん中で脚をためたメジロラモーヌは、4コーナーで早くも先行勢を射程圏に捉え、直線では馬場の中央に持ち出されると、坂下、ほんの少し気合いをつけられただけで先頭へと踊り出る。そこからは完全に独壇場だ。ダイナアクトレスを突き放し、追い込んだユウミロクには2馬身半の差。堂々の勝利で10年ぶりとなる牝馬二冠を成し遂げたのである。
秋シーズン、いよいよ偉業達成の瞬間がやってきた。初戦・ローズSを勝利したメジロラモーヌは、当然のように1番人気を背負ってエリザベス女王杯へ。この一戦はメジロラモーヌにとって、もっとも苦しく、だがもっとも気迫のこもったレースといえただろう。
逃げるマチカネエルベに4コーナーで並びかけると、直線入口ではもう抜け出す。そのまま懸命に粘り抜き、1完歩ごとに差を詰めるスーパーショットを2分の1馬身振り切ってのゴール。何が何でも。そんな執念すらうかがえる押し切り勝ちだった。
桜花賞、オークス、エリザベス女王杯の牝馬三冠(当時は秋華賞の創設前)と、それらのトライアルもすべて制するという完全なキャンペーンを終えたメジロラモーヌ。もちろん最優秀4歳(現3歳)牝馬に選ばれ、翌1987年には顕彰馬にも選出された。
パーフェクトな道のりを、永遠に競馬史に刻んだのである。