ストーリー
中央競馬で3歳時(旧表記)から、6年連続重賞制覇という空前絶後の記録を残した馬といえばドウカンヤシマ。では、4年連続でJRA賞を重賞した馬は? 4年もの長くに渡って頂点に立ち続けるなど並大抵のことではないが、それを成し遂げたのが牝馬G1で5勝を挙げたメジロドーベルだ。
メジロドーベルのデビューは96年。新馬戦を快勝し、2戦目の新潟3歳Sこそ5着に敗れたが、サフラン賞、そして牡馬相手のいちょうSを連勝。阪神3歳牝馬Sではシーキングザパールに1番人気を譲ったものの、中団追走から鮮やかに差し切って重賞初制覇を飾り、この勝利でまずひとつ目、最優秀3歳牝馬(当時)のタイトルを手中にした。
ところが、年明け初戦のチューリップ賞3着で連勝が止まり、桜花賞ではキョウエイマーチに4馬身差をつけられる2着に敗退。メジロドーベルが見せた前年秋の勢いは途絶え、4連勝を飾ったキョウエイマーチが世代トップの座を手にしたかと思われた。
しかし、続くオークスでメジロドーベルは東京2400mの舞台を味方に逆襲を見せる。中団やや後方を追走すると、直線でキョウエイマーチが距離の壁に阻まれて失速するのを尻目に、馬場の中央から豪快な伸び脚を繰り出して完勝。対戦成績を1勝1敗とし、ラスト1冠、秋華賞で最優秀4歳牝馬の座を争うこととなった。
秋初戦はメジロドーベルがオールカマーで古馬を一蹴、一方のキョウエイマーチもローズSを制して秋華賞は2強ムード。4コーナー手前で先頭に立ったキョウエイマーチを目標に外から進出したメジロドーベルは、残り100mでこれを捕らえると、そのまま2馬身半突き抜ける圧勝。この後マイル路線を進むキョウエイマーチとの最後の対決で完勝を収め、再び世代の頂点の座を掴み取ったのだった。
こうして、同世代の牝馬同士では頂点を極めたメジロドーベル。しかし、翌年はひとつ年上の女傑・エアグルーヴとの対決が待っていた。
翌年のメジロドーベルは苦戦が続き、優勝は牝馬同士の府中牝馬Sのみ。迎えたエリザベス女王杯では、牡馬相手に好走を重ねていたエアグルーヴが断然人気となり、メジロドーベルの劣勢ムードは否めなかった。
しかし、ここ一番では文句なしの強さを見せたのがメジロドーベルという馬だ。外を回ったエアグルーヴが伸びを欠く中、狭いラチ沿いから上がり33秒5の豪脚を繰り出し見事に優勝。この勝利で、3つ目となる最優秀5歳以上牝馬のタイトルを獲得したのだ。
翌年も現役を続行したメジロドーベルは、連覇を賭けてエリザベス女王杯に出走する。この年は故障もあって2戦未勝利と状況は厳しかったが、この苦境も乗り越えフサイチエアデール以下に快勝。4年連続G1制覇、そして再び最優秀5歳以上牝馬に輝き、4年連続JRA賞受賞という快挙を成し遂げた。
この一戦を最後に引退したメジロドーベル。惜しむらくは牝馬三冠を逃したことだが、それに優るとも劣らぬ輝かしい成績を残した名牝である。