「求められた結果を出して、みんなが喜んでくれる。それがジョッキーの仕事。」

「勝ちたい理由は、僕を求めてくれた人たちに結果で喜んでもらいたいから」と語る川田騎手(Photo by Getty Images)

デビューから丸18年、競馬に対しての向き合い方、取り組み方も大きく変わったのではないですか?

「若い頃は、とにかく生き残ることに必死でした。デビューした当時は、思ったように勝てない現実に直面して、はたしてこの世界でジョッキーとして生き残っていけるのか……、危機感がありましたね。どんなに力の足りない馬であっても、ひとつでも上の着順に持ってくるというところから始まって、気づいたら生き残っていて、上を見続けているうちに仕事の内容がどんどん変わっていって。素晴らしい馬に乗せていただく機会が増えていくなかで責任が増大し、今はより結果を求められる立場になりました。」

そんな今現在のモチベーションはどこにありますか?

「つい先日、(福永)祐一さんに『お前はこれから何がしたいんだ?』と聞かれまして。『たとえば、海外に腰を据えて、ビックレースをもっと勝ちたいとか、そういう想いはあるか?』と。それで改めて考えたんですけど、僕個人としてやりたいことって何もないんですよ。」

「何もない」とは?

「ジョッキーとして必要としてもらえているから続けられていますけど、決して自分のためにジョッキーをやっているわけではない。祐一さんからの質問に対し、深く考えて改めて思ったのですが、我が川田家は曾祖父の代からこの仕事をやらせてもらってますので、この100年弱、我が家は馬にご飯を食べさせてもらってきたんです。馬のおかげで生きてこられた川田家なんです。それが肝にあるというか、僕にとってはすごく大事なことで。だからこそ、こういう立場にいさせてもらっている今は、求められる仕事に応えることが生きている意味というか、求めてくれる人がいて、求められた結果をその人に届けて、喜んでもらうことが僕の存在意義だと思うので。ジョッキー川田将雅は、現代競馬の歯車のひとつとして、存在させていただいている。それが全てで、個人的にどうしたいこうしたいっていうのはないんです。祐一さんにも、そう答えました。」

その答えに、福永騎手はどんな反応をされましたか?

「『お前はそんな感じやな』って。当然、海外の大きいレースを勝ちたいという気持ちはあります。でも、勝ちたい理由は、そのときに僕を求めてくれた人たちに結果で喜んでもらいたいから。もちろん、その喜びの輪のなかには僕もいるわけですが、僕が個人的に勝てばいいわけではない。たとえば、仮に単独で海外に行って大きいレースを勝てたとしても、喜びの質が違うと思うんです。一頭の馬が走るためには、ほんとに多くの人が関わって、色んな想いをその馬に託してます。そこで結果を出すために僕をジョッキーとして求めてくれる人がいて、求められた結果を出して、みんなが喜んでくれる。その形こそが、今の僕にとってのモチベーションなのかもしれません。だから、求められるジョッキーであり続けたい。そう思っています。」

桜花賞をスターズオンアースで制覇し、早くも2022年の初G1制覇を果たした(Photo by Shuhei Okada)

4月10日終了現在、1737勝。2000勝が見えてきていますが、数字的な目標はありますか?

「全然ないですね。ここまで勝たせていただけてありがたいですが、大きな区切りとして2000勝という数字が近づいてきたことについては、『2000勝が見て来たってことは、俺もすげー年取ったなぁ』って(笑)。」

そうなんですね(笑)。今日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。ところで、川田騎手はJRA-VANを利用したことはありますか?

「めちゃくちゃ使ってますよ。依頼を受けた馬をまずは検索して、血統や兄弟馬を確認したり、セレクトセールの値段を見て「こんなに高いの?」とビックリしたり(笑)。過去のレースの距離や馬場状態、成績、枠順や通過順位、馬体重の変化、乗っていた騎手、斤量、レース時計、上がり時計。ズラッと見て、そこから細かくレース映像をチェックします。過去の追い切りの映像も見られますしね。そうやって普段から騎乗馬を深く知るために使わせてもらっています。僕の情報収集は、ほぼJRA-VANです。これ、ホントです(笑)。」

最後になりますが、毎週競馬を楽しみにしているファンに向けて、改めて川田騎手の言葉で競馬の素晴らしさを伝えてください。

「まだ満員のお客さんの前で競馬をお見せすることができない状況ではありますが、たとえ画面越しであっても、競走馬の迫力や美しさ、真剣勝負の緊張感は伝わると信じて、馬と共に僕たちジョッキーも毎週頑張っています。何より、競走馬が全力疾走している姿には、必ず何かを感じていただけると思っていますので、これからも馬たちが頑張って走っている姿をひとりでも多くの方に見ていただけたらありがたいです。」