関係者インタビュー Vol.04
川田 将雅騎手
「求められるジョッキーであり続けたい」
2021年はJRA最高勝率騎手に輝き、ラヴズオンリーユーとのコンビで歴史的な偉業も達成。国内外で圧倒的な存在感を放つ川田騎手に、競馬に対する向き合い方を伺った。
取材・文 不破由妃子(取材日:4月6日)
「ブリーダーズカップは冷静に勝利を噛みしめながらゴールしました」
昨年は、日本人ジョッキーとして初めてBCフィリー&メアターフを制覇。ご自身にとっても、初の海外GT制覇となりました(12月の香港カップも同コンビで制覇)。2021年という年は、川田騎手にとってどんな一年でしたか?
川田騎手(以下、「」のみ)「“ジョッキー川田将雅”としては、とても貴重な経験をさせていただいた一年だったなと思います。ラヴズオンリーユーという素晴らしい馬の背中に居れたことで、アメリカ、香港の世界的なGTを勝たせていただき、その喜びを関係者のみなさんと共有することができました。非常に貴重でありがたい経験と時間でした。ただ、個人的には、それまでの年と変わりなく、求められる仕事と向き合っていただけです」
とはいえ、ブリーダーズカップの舞台に立つことは、幼い頃からの夢だったと伺いました。そんな夢の舞台でトップでゴールを決めた瞬間は、どんな思いが込み上げましたか?
「動く準備をしつつ道を作って、動かしに行ってしっかり反応した時に、『ああ、勝ったな』と確信しました。そこから前の馬を捕まえに行ったので、本当に冷静に、僅かな時間ですがゆっくりと勝利を噛みしめながらのゴールでした。激しい昂ぶりはなく、求められた結果を獲れる安堵感が強かったです。でも、ブリーダーズカップだし、歴史的なことなので、ガッツポーズをしたほうがいいのかなとちょっと考えましたが、『まぁいいか』と(笑)」
レース後、記念写真を撮影した際のハートマークも話題になりました。
「アメリカに着いて最初に厩舎に行った時点で、『勝ったらハートマークやってね』と言われていたんです。それ以降も、レース当日まで毎日言われてまして(苦笑)。いざ撮影となったときも、みんなが僕を見ながら『将雅くん、ハートハート!』と。そこで『やらない』と言うほど、僕は空気を読めない人間ではありません(笑)」
ラヴズオンリーユーとのコンビでは、海外GT2勝を含め4戦3勝という好成績を収められました。改めて、川田騎手が感じたラヴズオンリーユーの強さの源とは?
「そもそも圧倒的な能力の持ち主だったというのが前提ですが、加えて彼女には気持ちの強さがあった。気が強い馬はたくさんいますが、その気持ちが走るほうに向いてくれない馬もたくさんいるなか、彼女の場合、持ち前の気の強さが走るほうに向き、それを競馬で生かすことができた。だからこそ、持てる能力を出し切れたわけで、強さを語る上では、そこが一番のポイントだと思います。それに、あそこまで特徴的な目をしている馬ってなかなかいないんです。左目はとくに、ちょっと馬とは思えないくらい白目の割合が大きくて。本来馬は、白目が少しあるだけでも、性格が難しいと言われる生き物なんですけどね」
ちなみに、レース以外の時間では、女の子らしい一面を見せたりしていたんですか?
「僕に対しては、そういう面を見せたことはないですね。僕がちょっとでも近寄ろうとしたら、シャッと耳を伏せてね。『近寄るな!』という雰囲気を思いっ切り出していましたから。だから、できるだけ近寄らないようにしていたんですが、アメリカでは勝った後、馬房に居る彼女と、みんなで記念に写真を撮ろうとスタッフから近づくことを求められる場面がありまして。「僕が近づいたら怒るよ」と言ったんですが、『いいから来て』と。で、案の定、怒られるという(笑)。「お前は近寄るな!」とめちゃくちゃ怒ってました。はい、ごめんなさいとすぐ離れました(笑)」