「乗り方は常に模索し続けていて、より良い結果を出していくのがプロ」

川田騎手は2019年から3年連続でJRA最高勝率騎手を受賞している(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

今年の話に移りますが、4月10日終了時点で54勝を挙げ、リーディングトップを独走中。勝率は驚異の29.7%を記録されていますが、ご自身ではどう受け止めていますか?

「それだけの馬に乗せていただいているので、求められる結果を獲ようとすると、このような数字になりますし、それが今の僕の仕事だと思っています」

2019年から3年連続でJRA最高勝率騎手を獲得され、2013年と2014年にも同賞に輝いています。2019年から一気に勝率が上昇していますが、その前後で意識的に何かを変えたりなど、ご自身のなかで変革があったのですか?

「乗り方は常に模索し続けていて、そのなかで馬と自分にとってより良いものを残し、使えないものは削除してきました。あるときを境に極端に何かを変えたということではなく、それを繰り返してきた結果が今です。経験が増えると同時に技術も磨かれ、勝ち切らせる確率も上がっていく。常により上手くなろうとすることは、プロとして当然のことだと思っています」

近年の川田騎手の騎乗を見ていると、ゴール寸前で馬がもう一歩、スーッと伸びていく印象があります。それはご自身でも実感がありますか?

「実感していますよ。スタートからゴールまで、そうなるように運んでいますから。でも、伸びているというより、止まっていない、辛抱しているという表現のほうが正しいレースの方が多いです。結果的に、ほとんどのレースが最後はバテ合いなので、ほかの馬より少しでも辛抱できる状態でゴールまで連れて行くと。勝つことができなかったレースではありますが、ドバイワールドカップのチュウワウィザードもすごく伸びているように見えたと思いますが、実際は辛抱して我慢し続けた結果、下がってきた馬たちを捕まえつつ、1番強いと言われていたライフイズグッドも捕まえることができ、3着まで来れました。この前の大阪杯のレイパパレもそうですね」

「レース全体の中で、どうスタートを切り、どう道中を走らせ、どうゴールまで連れて行くかが大事」と語る川田騎手(Photo by Getty Images)

伸びているのではなく、辛抱させている。そこに川田騎手のテクニックがあると。

「最後の1ハロンが速ければいいというわけではないですから。実際、最後の1ハロンが一番速い競馬なんて、新馬戦以外ではほぼありません。大事なのは、レース全体の中で、どうスタートを切り、どう道中を走らせ、どうゴールまで連れて行くか。その都度、何が最善かを選択しながらやっていますが、みんなが下がってくるであろうところで、こっちは辛抱できるような組み立て方をすれば、ゴール前で伸びているように見えるということです」

先ほど少しお話に出ましたが、レイパパレで挑んだ先の大阪杯は2着。同期である吉田隼人騎手との馬上でのハイタッチは、とても印象に残るシーンでした。

「大阪杯のレイパパレは、素晴らしい走りをしてくれました。それはもう、これ以上できることはないというくらいまで走り切ってくれました。そんなレイパパレが捕まったということは、吉田くんとポタジェも間違いなく素晴らしいレースをしてきたということ。それが瞬間的にわかったので、自然と『おめでとう』という気持ちになりました。僕がレイパパレの能力を出し切れずに負けたのだとしたら、自分のなかにもどかしい気持ちが残って、すぐさま相手を称える気持ちにはなれなかったかもしれません。でも、あの日のレイパパレは本当に全力で走り切ってくれました。だからこそ、勝った相手を称える仕草が自然と出たんだと思います」

マカヒキでダービーを勝ったとき、2着に負けたルメール騎手が手を差し伸べて、馬上でハイタッチをしましたよね。そのあと川田騎手は「僕だったら、負けたことが悔しすぎて、あんなことはできない。いつか、あんなふうに勝った相手を称えられる人間になりたい」とおっしゃっていました。

「ああ、言いましたね。覚えています。大阪杯は、僕も感慨深いものがありました。同期の(藤岡)佑介(ジャックドール)、吉田くん(ポタジェ)、僕(レイパパレ)がいて、エフフォーリアの助手の水出(大介)も同期ですからね。1、2、3番人気に20期生が関わって、勝ったのも20期生の吉田くんですからね。20期生はよく生き残っていると思いますよ、全然話題にしてもらえないですけどね(苦笑)」

今年デビューした新人騎手が38期生ですから、気づけば川田騎手ももうベテランの域なんですよね。

「そうですよ。僕ももうアラフォーですからね(笑)」