ストーリー
パンサラッサは2017年3月に北海道・新ひだか町の木村秀則牧場で誕生した。父はスプリント王のロードカナロア、アイルランド生まれの母ミスペンバリーは現役時代に7戦未勝利だったが、その父にモンジューを持つなど母系は豊富なスタミナを内包。父のスピードと絶妙な融合を実現した牡馬は、世界の芝とダートを舞台に金字塔を打ち立てる。
パンサラッサの兄姉にはエタンダール(2012年青葉賞2着)、ディメンシオン(2019年京成杯AH2着など)という2頭の重賞入着馬がいた。パンサラッサはディメンシオンが京成杯AHで活躍した2週後にデビューし、当時は中団で戸惑ったまま6着という結果に終わったが、2戦目から行き脚がつくようになると、不良馬場の3戦目には後のスタイルを暗示するかのように2番手から独走し、大差でド派手に初勝利を挙げる。
ただ、8か月後の3歳6月に2勝目を挙げた際こそ逃げ切りだったものの、次戦のラジオNIKKEI賞では好位からの競馬で2着。逃げにこだわる型を確立した訳ではなく、重賞での賞金加算でオープン入りを果たした一方で白星から1年余り遠ざかった。
そうして迎えた4歳秋のオクトーバーSでパンサラッサの前に大きな道が拓ける。初コンビを組んだ吉田豊騎手が矢作芳人調教師の要求通りに先手を打ち、リズム優先で運ぶと大逃げの格好に。そのまま一杯に粘り込んで待望の3勝目を挙げた。これできっかけをつかむと次戦の福島記念もハイペースで飛ばし、肉を切らせて骨を断つ真っ向勝負で重賞初制覇。けれん味なく疾走する姿は「令和のツインターボ」の異名を取るようになった。
明け5歳の中山記念からは吉田豊騎手が主戦に定着し、ドバイターフでも果敢に逃げて前年の覇者ロードノースと同着優勝。劇的にG1ホースの仲間入りを果たすと、秋には天皇賞で大逃げの形から2着に粘り込み、年度代表馬に輝くイクイノックスの豪脚を引き出すなど、ドラマチックなレースを連発して競馬ファンを魅了し続けた。
そして、高まるばかりの人気は6歳初戦でピークに達する。世界最高賞金レースのサウジCで生涯2度目のダートに挑戦すると、逃げのスタイルを貫いて1着賞金1000万ドル(当時のレートで約13億6000万円)を手にするパンサラッサらしい派手な勝利を飾った。その後は繋靭帯炎に見舞われるなどもあり2戦で引退したが、生まれ故郷の新ひだか町にあるアロースタッドで種牡馬入り。豪州でのシャトル供用も決まり、その血で再び世界制覇のチャンスをうかがっている。