ストーリー
マチカネフクキタルの父はクリスタルグリッターズ。仏GIのイスパーン賞を連覇した馬で、公営の雄アブクマポーロやサファイヤS勝ち馬アルファキュートなどを出した中堅種牡馬だ。母はアテナトウショウ。二冠馬コダマや桜花賞馬シスタートウショウなどを出した名牝系の出身である。
それなりに芯の通った血統ではあったが、マチカネフクキタルの生誕は1994年、デビューは1996年。サンデーサイレンス産駒が次々と重賞を制し、トニービン、ブライアンズタイムと並んで“三大種牡馬”と呼ばれたのも束の間、早くも一強時代へと進み始めた頃のことだ。だから、マチカネフクキタルに対する注目度はさして高くなかったといえる。
事実、初勝利をあげたのはようやく3戦目。500万下を2戦で突破し、プリンシパルS2着でなんとか日本ダービー出走権を手にしたものの、本番では11番人気、結果も7着というものだった。
振り返れば、新馬戦で敗れた相手は後の桜花賞馬キョウエイマーチ。プリンシパルSではサイレンススズカに屈し、日本ダービーではサニーブライアンの逃げ切りを許している。“速さ”に勝るライバルたちには、どうしても届かなかったのだ。
だが、その裏返しがマチカネフクキタルの持ち味といえた。すなわち、成長力とスタミナだ。3歳(現表記)7月の900万下・さくらんぼSを3馬身差で勝利したマチカネフクキタルは、そこから素質を開花させて栄光への階段を駆け上がっていく。
神戸新聞杯は強烈な直線一気。サイレンススズカを差して1馬身4分の1突き放し、重賞初制覇を果たす。続く京都新聞杯も強い内容で、中団から差し脚を伸ばすと、古馬相手に好走していたパルスビート、日本ダービー3着のメジロブライトやステイゴールドらを降して重賞連覇を成し遂げ、完全本格化をうかがわせたのだった。
そして迎えたのが、1997年・第58回菊花賞。日本ダービー2着、秋初戦の京都大賞典ではダンスパートナーら古馬勢を一蹴したシルクジャスティスが1番人気に推され、メジロブライトが2番人気、マチカネフクキタルは3番人気という順。が、重賞連覇で自信を得たマチカネフクキタルは、力強いレースで勝利をつかみ取ることになる。
好スタートを切ったマチカネフクキタルは、鞍上・南井克巳騎手にガッチリと手綱を引かれて控えると、逃げたテイエムトップダンら先行勢を好位〜中団の内で追走する。3コーナーでは外からシルクジャスティスとメジロブライトが進出していったが、慌てずに末脚をためたマチカネフクキタルは、そのパワーを直線で爆発させた。馬群を割っての差し切り勝ち、激しい2着争いに1馬身差をつける完勝のゴールだ。
伸び悩んだ春の雪辱を、成長力とスタミナで果たした、4連勝での戴冠だった。