競馬予想・競馬情報トップ > 記事一覧 > 重馬場・不良馬場とは?雨の日の競馬の勝ち方
競走馬がレースを走る、または競馬ファンがレースを予想する上でとても重要な要素となるのが馬場状態。日本の競馬においては芝・ダートともに「良」「稍重」「重」「不良」の4段階に区分されており、最も乾燥している状態を「良」。そして、雨・雪などの影響により芝・ダートに含まれる水分が多くなるにつれて馬場状態は「稍重」「重」「不良」へと変化していきます。
では、水分がどのくらい含まれると馬場状態は変化するのか。JRAでは芝・ダートともにどの程度の水分が含まれているかをパーセンテージで表す「含水率」をホームページで発表しています。ただし、この数値によって自動的に馬場状態が決まるわけではなく、あくまで一つの判断要素。競馬場の馬場担当者が実際にコースを歩き、馬場を踏みしめた感触やどのくらい水分が浮き出るかを調査し、総合的な判断で馬場状態を決定しています。馬場状態区分の判断基準は以下の通りです。
「良」
芝……踏みしめた際、馬場の表面はほとんど変化しない状態。
ダート……クッション砂(表層)を握った際、固まらない状態、または固まってもすぐに崩れる状態。
「稍重」
芝……踏みしめた際に水は染み出ないが、馬場の表面がやや凹む状態。
ダート……踏みしめた際に水は染み出ないが、クッション砂を握ると団子状に固まる状態。
「重」
芝……表面に水は浮いていないが、踏みしめると水が染み出る状態。
ダート……表面に水は浮いていないが、踏みしめると水が滲み出る状態。「不良」
芝……表面や足跡に水が浮いている状態。
ダート……表面や足跡に水が浮いている状態。
(JRA公式ホームページより)2022年に実施されたJRAの平地競走全3331レース中、各馬場状態のレース数は、
「良」=2332レース(70%)
「稍重」=651レース(20%)
「重」=275レース(8%)
「不良」=73レース(2%)
このように日本ではほとんどのレースが「良」または「稍重」で行われていることが分かります。ということは、「重」「不良」はめったにない特殊な条件下で行われているレースであるとも言えます。では、そのような“特殊”な馬場状態は競走馬、あるいはレースにどのような影響をもたらすのでしょうか?
良馬場では好成績だった馬が大敗し、イマイチな成績だった馬が思いもよらぬ好走をする――ということは、重・不良馬場は“荒れやすい”とも言えそうですが、実際にはどうでしょうか? ここで、2022年に実施された平地競走における良馬場、重・不良馬場の単勝と馬連の平均配当をそれぞれ比較していきましょう。
この通り、良馬場と比べて重・不良馬場で行われたレースは、芝・ダートともに平均配当が大きく上昇していることが分かります。それだけ、道悪競馬になると過去の良馬場の成績がアテにならず、人気通りの決着になりづらいということなのでしょう。
「道悪」とも表現される重馬場、不良馬場になると、芝・ダートともに良馬場と比べて大きな違いが生まれます。 まず、芝では水分を多く含むことで芝を植えている地面(路盤)は柔らかくなり、クッション性も低くなっていきます。また、芝が濡れることで滑りやすくなり、競走馬にとっては走りづらく、より地面を蹴るパワーが必要になってきます。そのため、良馬場と比較して走破タイムが遅くなる傾向にあります。
一方、ダートでは芝とは逆の現象が起きます。砂は水分を含むことで引き締まって硬くなり、砂の中に脚元が沈みにくくなることで、競走馬にとって走りやすい馬場となります。そのため、走破タイムは良馬場と比べて速くなる傾向にあります。
重馬場、不良馬場になると「芝=パワー重視でタイムは遅くなる」「ダート=スピード重視でタイムは速くなる」と覚えておくといいでしょう。 そして、重・不良馬場となることで、良馬場で強い競馬をしていた馬が能力を全く発揮できずに大敗するパターンも少なくありません。それはなぜか? 競走馬には芝・ダートの適性、あるいは距離の適性があるように、良馬場と道悪馬場に対しての適性があるからです。
日本競馬は良馬場がスタンダードですから、その基本である良馬場で能力を発揮できる馬が好成績を残すことができます。芝ならスピードや瞬発力に優れた馬、ダートならパワーに秀でた馬がそれにあたります。しかしながら、重・不良馬場になると、求められていた資質が正反対のものになるわけですから、良馬場で発揮できていた強みを全く生かせずに大敗……というパターンが出てくるわけです。
それとは逆に、むしろ重・不良馬場の方が得意な馬がいるのも事実。良馬場ではイマイチな成績だった馬が、道悪競馬でまさに「水を得た魚」のように激走するというパターンも出てくるのです。
では、そんな荒れやすいレースで馬券を的中させるために必要なことと言えば……そう! 道悪が得意な馬の特徴を知ることです。
重・不良馬場を得意とする馬の特徴を見分ける手段として、例えば蹄の形、あるいは蹄から球節の間の部分である繋ぎなど、馬体のつくりから判断する方法があります。しかしながら、例えばパドックで周回している18頭の馬体の特徴を瞬時に判断するのは、ビギナーはもちろん、競馬歴の長いベテランにとっても至難。相当な修練を積まなければ身に付かない技能です。
そこで活用したいのが、誰でも簡単に調べることができるJRA-VANのデータ。重・不良馬場で走る馬の傾向や特徴が、目に見えて分かる数字として蓄積されているわけですから、大きな参考になるはず。では、さっそくJRA-VANを使用して、重・不良馬場が得意な馬の特徴を探っていきましょう。
芝・ダートや距離の適性と同様、重・不良馬場の適性も血統からある程度分析できます。過去に行われた重・不良馬場のレースではどの種牡馬の産駒が活躍したか――この結果を積み重ねて調査していけば、自ずと「重・不良馬場が得意な血統」が見えてきます。
例として、2020年〜2022年に実施されたJRAの平地芝レースにおいて、良馬場と比較して重・不良で好成績を挙げている種牡馬、反対に成績が落ちる種牡馬を何頭かピックアップしてみたいと思います(勝率/連対率/複勝率)。
このように、明確に差が出てくる種牡馬がおり、上に挙げた例で言えば、特にオルフェーヴル、ゴールドシップ、キングズベストは重・不良馬場で積極的に狙っていきたい種牡馬。逆にエピファネイア、ジャスタウェイ産駒は狙いづらいというデータが出ています。
また、イクイノックス、ソールオリエンスを輩出し、一躍トップ種牡馬の仲間入りを果たしたキタサンブラックは、この時点ではサンプル数が少ないとはいえ、重・不良でも抜群の成績。今後、「道悪で買える種牡馬」として注目して損はないかもしれません。
競走馬の大型化が進んだ近年では、全体的に馬体重が多い馬ほど活躍しているという傾向が出ています。それは重・不良馬場に限っても同じなのでしょうか。
血統データ同様に、2020年〜2022年に重・不良で実施されたレースに関して、ざっくりと馬体重を区切って勝率/連対率/複勝率のデータを取ってみたところ、以下のような結果となりました。
芝に関しては440kg以上であれば、数字はほぼ同じ。「馬体重が多い=パワーがありそうだから道悪でも有利」と思ってしまいそうですが、データ上ではそこまで気にしなくても良さそうです。
一方、ダートでは明確な差が出ました。馬体重が多いほど数字が伸びており、特に500kg以上の馬は好成績を残す傾向にあるようです。さらに細かく馬体重を区切っていくと、520kg〜538kgの馬は勝率11.1% / 連対率18.5% / 複勝率26.2%と、頭一つ抜けた数字となりました。ダートの重・不良馬場では500kg以上の馬を積極的に狙っていきたいところです。
ここに挙げた、データから分かる「重・不良馬場が得意な馬の特徴」はほんの一例に過ぎません。ありとあらゆるデータがぎっしりと詰まったJRA-VANを活用すれば、血統一つをとっても距離別、競馬場別などさらに詳細なデータを探ることができるので、重・不良における特定の条件にピッタリの血統が浮かび上がってくるはず。また、重・不良が得意な騎手・調教師、枠順の有利・不利、季節ごとに違いはあるのかなど、あらゆる条件で調査していくと、面白いデータを発見できるかもしれません。
JRA-VANには様々なサービスがあり、PCソフトのJRA-VAN NEXT(ネクスト)、スマートフォンアプリ、ニッチなデータを見たい方であればJRA-VAN DataLab.(データラボ)、手軽に予想をしたいのであればJRA-VAN TRYなどJRA公式データ(過去レースデータや出馬表・オッズ・調教データや血統情報等)30年分を利用することができます。これらを活用して、ぜひ自分だけが知っている「重・不良馬場のマル秘データ」を手に入れましょう!
重・不良馬場は荒れやすく、それが醍醐味の一つでもあり、高配当を狙うのなら道悪のレースは持ってこいの条件とも言えそうです。そして、JRA-VANのデータを検索、活用することで重・不良で有利になる馬を見つけられれば、高配当馬券ゲットも夢ではないでしょう。
しかしながら、重・不良馬場は前述した通り、日本競馬においてはそうそう頻繁にはならない特殊な条件。そのため重・不良馬場を経験する馬も少なく、データや馬体のつくりから「この馬は道悪が上手そうだ」と見ても、実際には“走ってみないと分からない”という馬がほとんどなのです。
それだけ重・不良馬場の競馬は不確定要素が多く、だからこそ荒れやすいし、馬券を当てるのも難しい。ですので、重・不良馬場の際には、よほどの自信・確信のある時以外はいつもより購入金額を少なくする、あるいは「見」(ケン=買わずに見送り)とするのも一つの手でしょう。
高配当が出やすいからといって無闇やたらに馬券を買うのではなく、JRA-VANのデータを活用して良馬場と重・不良馬場の適性の違いをしっかり把握し、時には慎重となることが、馬券上手へと一歩近づく道となるはずです。
重馬場・不良馬場の際に自分が買いたい馬の情報やオッズはどこで手に入れればよいか。間違いや誤った情報が多い中で、正確で馬券を買うための役立つさまざまな情報を提供しているのがJRA-VANです。JRA-VANには様々なサービスがあります。PCソフトのJRA-VAN NEXT(ネクスト)、スマートフォンアプリ、ニッチなデータを見たい方であればJRA-VAN DataLab.(データラボ)、手軽に予想をしたいのであればJRA-VAN TRYなどでJRA公式データ(過去レースデータや出馬表・オッズ・調教データや血統情報等)30年分を利用することができて多くの競馬ファンに愛用されています。まずはJRA-VANをのぞいてみましょう!
スポーツニッポン、スポーツナビの記者・編集者を経てフリーランスに。これまで競馬、競輪、プロレス・格闘技、Doスポーツ、オリンピックなど多彩なジャンルを担当し、取材・執筆活動を行ってきた。思い出の馬はギャラントアロー。大学時代に毎週末通っていた阪神競馬場を今でもホームと思っている。