ストーリー
春競馬終了とともに行われる「クラス替え」では、4歳馬の多くがひとつ下のクラスに降級する。降級すれば相手が楽になり勝ちやすくなるものだが、中には条件戦での勝利をきっかけに、降級前を上回る大活躍を見せる馬もいる。10年のマイルCS優勝馬・エーシンフォワードもそんな1頭だった。
外国産馬のエーシンフォワードは07年の10月にデビューし、芝1400mの新馬、500万をともに2番手から抜け出して連勝。続くG1・朝日杯FSでは揉まれる形で力を出せず9着に敗れてしまったが、休養を挟んでアーリントンCではダンツキッスイの2着、そしてニュージーランドTではサトノプログレスの2着と、重賞でも好走を見せた。しかし、G1再挑戦となったNHKマイルCで10着に敗退。さらに、日本ダービーでは15着と大敗を喫してしまう。再び休養を挟み、暮れの阪神Cで復帰して11着。さらに、京都金杯でも12着と、適条件に戻っても結果を出せず、ダートに目先を変えても9、15着と不振が続いた。
ここでリフレッシュ放牧に出されたエーシンフォワードは、秋に帰厩して1600万条件からの再スタートし、芝1400mの初戦は12番人気ながら3着に好走。2戦目は初の芝1200mで5着に敗れたものの、1400mに戻った3戦目・六甲アイランドSでは2着に2馬身差をつけ、ついに2年2ヶ月振りの勝利を手中にした。
オープンに戻っての初戦は09年を締めくくるファイナルSで、ここも1馬身4分の1差で2連勝。年明けもニューイヤーS2着、東京新聞杯3着と好走し、1600万での勝利をきっかけに一時の不振からは完全に脱していた。そんな中で迎えたのが芝1400mの阪急杯だった。本格化後は初めてとなるオープン・重賞での1400m戦。過去4勝中3勝を挙げているこの距離で、エーシンフォワードは直線で狭いところを割って鮮やかな差し切り勝ち。勝負根性も身につけ、3歳時よりさらに強くなった姿をファンに印象づけた。
阪急杯で重賞初制覇を果たしたエーシンフォワードは、高松宮記念に出走して3着。追い比べでわずかに届かなかったものの、G1の1200mで好勝負を演じたことで、この馬への信頼性はさらに高まった。ところが、1400mに戻り1番人気に推された京王杯スプリングCで4着に敗退すると、安田記念は10着。さらに秋初戦、1400mのスワンSでも1番人気8着と、再び人気を裏切ってしまう。
迎えたマイルCSは、勝ち鞍こそあっても1ハロン長い1600m戦。前走の1番人気から一転、13番人気と人気を落としていた。しかし、中団のインを追走したエーシンフォワードは、直線内から鋭い末脚を繰り出し、外から追い込むダノンヨーヨーなど差し馬勢を封じて優勝。1分31秒8のコースレコードで見事にG1初制覇を成し遂げたのだった。
その後は香港マイル4着好走などもありながら、勝利には恵まれず2012年より種牡馬入りしたエーシンフォワード。早い時期から結果を出し、成長力も示した自身の特徴や、そのスピードを受け継いだ産駒の活躍が期待される。