ストーリー
ダートとは異なる性質を持つオールウェザーコース。2011年にはヴィクトワールピサがドバイワールドCを制したが、日本の芝馬がこのオールウェザーコースで力を発揮できることを最初に証明したのが、その前年にアル・マクトゥームチャレンジ ラウンド3を制したレッドディザイアだった。
レッドディザイアは3歳を迎えた09年1月にデビュー。新馬戦はハナ差ながらも直線で爆発的な末脚を繰り出して差し切り勝ち。さらにエルフィンSでは、後方から馬の間を縫うように伸び、再びハナ差ながらもデビュー2連勝を飾った。
迎えた桜花賞は2番人気だったが、単勝オッズは14.4倍。直線で抜け出しかかる見せ場こそ作ったものの、単勝1.2倍の断然人気に推された前年の2歳牝馬女王・ブエナビスタに外から一気に交わされ、G1タイトル獲得には及ばなかった。
続くオークスはブエナビスタの末脚を封じようと、過去3戦よりは早めに道中は中団。さらに3コーナー過ぎから積極的に前との差を詰め、直線半ばで一気に抜け出す策に出た。しかし、坂を上がると外からブエナビスタが強襲。ゴール寸前まで粘ったものの、最後の最後にわずかに交わされ、レッドディザイアはまたも2着と涙をのんだ。
秋はローズS2着で復帰し、2戦目が牝馬三冠最後の秋華賞。オークス同様に道中は中団につけると、4コーナーでは内から先行集団の直後まで接近した。そして直線。残り200mで先頭に立つと、外に馬体を併せてきたブエナビスタとの一騎打ち。必死に抵抗を見せるレッドディザイア、一完歩ずつ差を詰めるブエナビスタ。しかし今度は最後まで交わさせず、ついに最後の一冠でG1制覇。ブエナビスタの3着降着はあったものの、しっかりとハナ差先着を果たしてのタイトル獲得だった。
秋華賞優勝後、ジャパンCでも古馬相手に3着と健闘を見せたレッドディザイア。翌10年は、芝2410mで行われるドバイシーマクラシックを目標に旅立っていった。
現地初戦は、この年からオールウェザーコースの2000mになったアル・マクトゥームチャレンジ ラウンド3(G2)。レッドディザイアは後方で脚を溜めると、直線は馬群の大外へ。直線入り口ではやや内にもたれたが、立て直すと内の各馬を一瞬にして飲み込む抜群の末脚を発揮。ほかに後方から伸びる馬がいない中、レッドディザイア1頭だけが目を見張る末脚で、豪快な差し切り勝ちを決めたのだった。
この勝利で目標をドバイワールドCに切り替えたレッドディザイアだったが、本番では末脚不発の11着。その後はアメリカにも遠征して好走を見せたが、鼻出血に悩まされ、11年の札幌記念3着を最後に繁殖入りすることになった。世界のG1には手が届かなかったものの、その可能性を存分に感じさせたレッドディザイア。今度はその産駒に世界制覇の期待がかかる。