ストーリー
1985年の桜花賞を制するなど重賞5勝をマークし、優駿賞最優秀4歳牝馬(現在のJRA賞最優秀3歳牝馬)にも選出された快速馬エルプス。残念ながらその産駒たちは母を超えるどころか1勝をあげるのがやっとという成績に終わったが、うち1頭、リヴァーガールは繁殖牝馬となってからダンシングブレーヴとの間に優れた牝馬を産み落とす。
それが、テイエムオーシャンだ。
祖母のエルプスと同様、テイエムオーシャンも早くから素質を開花させた。持ち味は圧倒的なスピード、そして勝負根性だ。
2000年、2歳(現表記)8月に札幌で迎えたデビュー戦を楽々と逃げ切り、2戦目は後続に6馬身で圧勝。札幌3歳S(当時)はジャングルポケットに敗れたものの一線級の牡馬に混じって3着と健闘し、そして阪神3歳牝馬Sでは、先行策から他馬をねじ伏せての2馬身差完勝を飾る。
テイエムオーシャンは断然の本命馬として翌春のクラシックを戦うことになった。
2001年シーズンは、テイエムオーシャンにとって最良の年になった。
まずは初戦・チューリップ賞を1番人気で勝利。テイエムオーシャンにストップをかけようと集ったライバルたちを4馬身も突き放す圧倒的な走りだった。
第一冠の桜花賞でも素晴らしいレースぶりを見せた。2番手につけると、直線で抜け出して一気に後続を突き放す。ムーンライトタンゴやダイワルージュが鋭く伸び、中団あるいは好位からしぶとく粘る馬も何頭かいたものの、そんな激しい2着争いを3馬身後方に見て悠々のゴールを果たしたのだ。
オークスはレディパステルとローズバドの末脚に屈して3着に敗れたが、秋華賞ではこの2頭に雪辱してみせる。5か月ぶりの実戦だったにも関わらず、先行抜け出しの得意パターンに持ち込んで、2着ローズバド、3着レディパステルを完封。晴れて3歳牝馬二冠を成し遂げたのである。
2000年代に入り、ビッグレースで牡馬を打ち負かす牝馬が続々と誕生した。ビリーヴ、スイープトウショウ、ヘヴンリーロマンス、そしてウオッカとダイワスカーレット。海外でも、ウィジャボード、ザルカヴァ、ゴルディコヴァ、レイチェルアレクサンドラといった名牝がファンを沸かせた。
テイエムオーシャンにも、その系譜につながるだけの力はあった。実際、2002年の札幌記念では後のマイルCS勝ち馬トウカイポイント、有馬記念で3着となるコイントス、さらにはアドマイヤドンやイーグルカフェといった牡馬を一蹴している。が、続く天皇賞では1番人気ながら13着に敗れ、ジャパンCでは9着。2度挑んだ有馬記念も6着と10着に負けている。
それでも、3つのGIを含む5つの重賞タイトルを勝ち取り、2歳女王と3歳女王に輝いた事実は色褪せず、祖母を超えたと胸を張れる実績を残したといえるはずである。