1歳セッションの注目種牡馬

今年も1歳セッション、当歳セッションに上場される社台スタリオンステーションの繋養種牡馬と、その産駒についてお話を伺いたいと思います。

ディープインパクト

ディープインパクト

ディープインパクト

ここまでポストディープインパクトのお話を伺ってきましたが、1歳セッションで注目を集める種牡馬は、やはりラストクロップのうち4頭をセレクトセールに送り出すディープインパクトとなりそうですね。

徳武氏 「ディープインパクト自身がセレクトセールの取引馬であり、また種牡馬としてもセレクトセールを牽引してきただけに、最後の上場となるのは寂しい思いもあります」

上場馬の印象についてお聞かせいただけますか。

徳武氏 「上場番号1番のゴーマギーゴーの2020(牡)は、豊富な筋肉量が目を引きます。そして、1歳セッションの最後に上場されるスイープトウショウの2020(牡)は、父と母の双方の良さを両立させたような印象を受けます。ワッツダチャンセズの2020(めす)もディープインパクトの牝馬らしい品の良さが感じられますし、ジュエルメーカーの2020(めす)も含めて、各牧場の方々がこの1歳セッションに貴重な産駒を送り出してくれたことで、ディープインパクトに対する感謝の気持ちで会場が一杯になるでしょうね」

サトノダイヤモンド

サトノダイヤモンド

サトノダイヤモンド

そのディープインパクトの後継種牡馬の1頭であり、1歳セッションに6頭、当歳セッションにも6頭の産駒を送り出すのがサトノダイヤモンドです。

徳武氏 「サトノダイヤモンド産駒は身体の造りに狂いがなく、また、こちらが思い描く成長曲線に沿って成長してくれています。これは、生まれながらの好馬体をキープし続ける父ディープインパクト、祖父サンデーサイレンスの産駒にも共通する長所だと思います。その2頭と比べると、サトノダイヤモンド自身はロングボディで、賢くて穏やかな性格からしても、産駒は長い距離での活躍が見込めそうです」

現役時は菊花賞(GI)、有馬記念(GI)に優勝して、4歳時には凱旋門賞(仏G1)出走も果たしています。

徳武氏 「父のサトノダイヤモンドだけでなく、祖父のディープインパクトがやり残したことを、今後は産駒たちが叶えてくれると思います。産駒たちは昨年の当歳セッションでも高い評価を受けていましたが、1歳になって身長が伸びて、体重が増えた産駒たちも馬体の良さは変わりありません。その意味では1歳、当歳を問わず、気に入った産駒がいたら、購入するべき種牡馬と言えるでしょう」

リアルスティール

リアルスティール

リアルスティール

リアルスティールもまた、サトノダイヤモンドと同じディープインパクトの産駒となります。こちらは1歳セッションに8頭、当歳セッションに12頭の産駒が上場されています。

徳武氏 「ディープインパクトの後継種牡馬の中では、付けやすい種付料(2021年は250万円)にしたこともあってか、社台グループだけでなく、日高の生産者の方にも多くの繁殖牝馬を連れてきてもらいました。この馬もサトノダイヤモンドと同じように遺伝力が強いというのか、どのような繁殖牝馬に配合しても、馬格や品のある顔立ちなど、リアルスティールの特徴が強く出ていますね」

産駒の距離適性については、どのようにお考えですか?

徳武氏 「リアルスティール自身は、菊花賞(GI)で2着に入っていますが、G1初制覇となったドバイターフ(UAE)のレース内容や、ピッチ走法で回転の利いた走りからして、マイル近辺で高い適性を示していました。その意味で、来年デビューする産駒は、朝日杯フューチュリティSや阪神ジュベナイルフィリーズ、そして桜花賞やNHKマイルカップといったマイルのGIレースを沸かせてくれると思います」

マインドユアビスケッツ

マインドユアビスケッツ

マインドユアビスケッツ

輸入種牡馬のマインドユアビスケッツは、1歳セッションに8頭、当歳セッションに6頭の産駒を送り出しています。

徳武氏 「マインドユアビスケッツは、馬の購買のプロに評価される種牡馬だと思います。血統的には日本競馬向きと言える、Deputy Minister 3×4のクロスを持っており、サンデーサイレンス系との相性も良いです。アメリカのスプリント戦線で活躍した馬ですが、先行馬が絶対的に有利なレースにもかかわらず、マインドユアビスケッツは後方から大外をぶん回して、展開がはまれば勝つ、はまらなかったら脚を余すといった、豪快なレースを見せていました」

そのスピードとパワーを両立した末脚は、産駒にも伝わりそうですね。

徳武氏 「アメリカのスプリンターにしては、そこまで馬体の厚みもありませんし、どちらかと言うとスラっとした印象で、歩きも“平均台の上を歩いている”ような印象を受けます。日本ではダートだけでなく、芝でも活躍馬を送り出しそうですし、バイヤーの方もまた、産駒が芝、ダートのどちらに適性があるかを見極めて購入されていると思います。2歳戦から活躍してくれそうですし、もちろん自身のように、古馬になってからの成長も見込めるはずですよ」

サトノクラウン

サトノクラウン

サトノクラウン

Marjuの持ち込み馬となるサトノクラウン。1歳セッションには7頭、当歳セッションには2頭の産駒が上場されています。

徳武氏 「サトノクラウンもまた、プロ好みの種牡馬と言えますね。馬体の造りがしっかりとしていながらも動きは柔軟で、性格も穏やか。にもかかわらず、レースになると前向きさを見せるところは、欧州の一流馬に共通する特徴だと思います。サトノクラウン自身は2歳のうちから活躍していましたが、古馬になってからも円熟味が増した走りを見せていました」

父のMarjuは長きにわたって、世界各国で活躍馬を送り出しています。

徳武氏 「特に香港で大物を多く送り出しているのは興味深いです。サトノクラウン自身も香港ヴァーズ(G1)を勝利しているように、力の要る馬場もこなせたからこそ、不良馬場で行われた5歳時の天皇賞(秋)でキタサンブラックを追い詰めることができたのでしょう。その一方で速い時計のレースにも適性を見せており、種牡馬として高いポテンシャルがあることは間違いないと思います。サンデーサイレンスの血を持つ繁殖牝馬との配合馬が多く、その力を借りて条件を問わない優秀な産駒を送り出しそうです」

レッドファルクス

レッドファルクス

レッドファルクス

現役時はスプリンターズS(GI)を連覇と、名スプリンターとして名を馳せたレッドファルクスですが、ダートのオープン特別である欅Sでも勝利しているという、まさに「二刀流」の競走馬。1歳セッションには3頭、当歳セッションには2頭の産駒が上場されています。

徳武氏 「社台スタリオンステーション繋養種牡馬でスプリンターズSを連覇した馬は、サクラバクシンオー、そしてロードカナロアと、どちらも種牡馬として成功しており、その意味でレッドファルクスもまた、その系譜に乗ってくれそうな期待があります」

父のスウェプトオーヴァーボード、祖父のエンドスウィープもまた、社台スタリオンステーションの繋養種牡馬となります。

徳武氏 「現役時はスラっとしていて、スウェプトオーヴァーボードというよりも、母の父のサンデーサイレンスに似た印象があったのですが、最近はコロッとしてきて、祖父のエンドスウィープらしさが出てきました。近年のせり市場は地方競馬の好況を受けて、ダートサイヤーの産駒も活発な取引が行われており、その意味でダートでも活躍したレッドファルクスの産駒は、生産者にとって売りやすい種牡馬となっています。また、スティンガーなど活躍馬を多く出してきた母系(祖母)のレガシーオブストレングスが、バイヤーの信頼度につながっている印象もありますね。何よりも、産駒は脚元が綺麗で、馬の造りに欠点がないので、購買者が安心してせりにご参加いただける種牡馬だと思います」

注記:当コンテンツは、2021年6月22日時点での情報を基に制作しています。

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。

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