ポストディープインパクト・ポストキングカメハメハの行方は?

昨年は、セレクトセールの“大功労者”だったディープインパクトとキングカメハメハについてお話を聞かせていただきましたが、今年はディープインパクト産駒が1歳セッションに4頭上場されるのみで、実質的にディープインパクトとキングカメハメハの産駒が不在となります。ポストディープインパクト・ポストキングカメハメハの行方は見えてきたのでしょうか?

徳武氏 「群雄割拠の様相ではありますが、エピファネイアとキズナは、その2頭に近づく可能性を感じさせています」

エピファネイア

エピファネイア

エピファネイア産駒は、昨年デアリングタクトが史上初となる無敗での牝馬三冠制覇を達成。今年もエフフォーリアが無敗で皐月賞を制して、日本ダービーでも勝ち馬(シャフリヤール)と差のない2着に入りました。

徳武氏 「エピファネイアの産駒は馬産地での評価が高く、それを見越したかのように、今年のセレクトセールの1歳、当歳セッションにも多くの産駒が上場(1歳:16頭、当歳:15頭)されています。一方、サンデーサイレンス→ディープインパクトと引き継がれてきたリーディングサイヤーの流れを受け継ぐのは、キズナとなりそうです。産駒はあらゆるカテゴリーで活躍していて、まさにオールラウンダー。海外の生産者も、ディープ亡き後、日本に残った所有牝馬の次の配合相手に指名してくれているように、国際的な評価も高まっています」

キズナ

キズナ

キズナも両日共に多くの産駒が上場(1歳:8頭、当歳:22頭)されています。

徳武氏 「産駒数が増えていくことで、どんな仔を出すのかをイメージできるようになると、より、それに見合った繁殖牝馬が集まりやすくなります。エピファネイアは今年も多くの種付けを行うなど各世代の層が厚いですし、キズナも今年はキャリアハイとなる1,000万円の種付料が設定されながら、多くの配合申し込みがありました。その意味で、今後もこの2頭は、数だけではなく質の意味でも良質な繁殖牝馬を集めていくでしょう」

現時点で次代のリーディングサイヤーに最も近い種牡馬と言えるのが、今年のリーディングサイヤーランキングで、ディープインパクトに次ぐ2位となっているロードカナロアです。

徳武氏 「ロードカナロアは、歴史的な名馬となったアーモンドアイから、昨年の香港スプリントで父仔制覇を果たしたダノンスマッシュまで、様々なカテゴリーで産駒を確実に走らせています。エピファネイアやキズナとは種牡馬としてのタイプが異なりますが、2頭を迎え撃つ立場であるのは間違いありません」

ロードカナロア

ロードカナロア

ディープインパクトと昨年の2歳リーディングサイヤーランキングで上位争いを繰り広げたのが、ドゥラメンテとモーリスです。

徳武氏 「GI級の活躍馬を送り出しているエピファネイアやキズナに比べると派手さこそなかったですが、勝ち馬の数も多く、また1歳、当歳世代共に多くの産駒がいることで層も厚くなっています。血統構成的にはどちらも2歳の早い時期向きではなかったにもかかわらず、この産駒成績は合格点と言えるでしょう。ここからはその成長過程に合ったデビュー時期やレース選択で、さらなるステップアップも望めそうですし、その中からは今年以上にクラシック戦線を沸かせるような産駒も出てきそうです。また古馬となってさらなる成長を遂げることで、リーディングサイヤーランキングでも上位に進出してくると思います」

ドゥラメンテ

ドゥラメンテ

モーリス

モーリス

オルフェーヴルやルーラーシップも、コンスタントにGIレースへ出走馬を送り込んでいます。

徳武氏 「この2頭は、世代を重ねてきたことで、どのような適性を持った産駒が誕生してくるのかが、生産者だけでなく、購買者にも理解されるようになりました。せりの上場頭数は先に名前を挙げた馬たちと比べると多くはありませんが、間違いのない競走成績を残してくれると思います。また、サンデーサイレンス直仔の種牡馬であるハーツクライからは、各世代の頂点に立つような産駒が必ず現れると思いますし、ダイワメジャーの産駒たちも、得意とする2歳戦からの活躍で、そのままクラシック戦線を沸かしてくれる可能性も十分にあります」

改めて、次代のリーディングサイヤー候補というか、未来の生産界を牽引していく種牡馬の産駒たちがそろったセールだと思わされるばかりです。

徳武氏 「“セレクト”と名が付いているように、限られた頭数しか上場できないセールですので、その中には来年や再来年の競馬で主役を務める馬がいるはずです。そのうえで、今年からはどの種牡馬からも、GIを勝つ産駒が出てくる可能性があると思います。セールをご覧になる皆さまも、種牡馬に注目するだけでなく、繁殖牝馬との相性も見るなど1頭1頭の可能性を見極めながら、アフターディープインパクト、アフターキングカメハメハのせりを、そして、その向こう側にある競馬を見てもらいたいですね」

注記:当コンテンツは、2021年6月22日時点での情報を基に制作しています。

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。

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