セレクトセール2019
今年のセレクトセールの上場馬だが、その大多数の父(種牡馬)を繋養しているのが社台スタリオンステーションである。
今年も昨年に引き続き、事務局の徳武英介氏に種牡馬の特徴やセールスポイント、そして産駒の未来像についてもお話をうかがった。
注目の種牡馬紹介(2歳世代)
セレクトセールに上場された今年の2歳世代ですが、社台スタリオンステーション繋養種牡馬ではエピファネイア、キズナ、そしてリアルインパクトの名前があります。
徳武氏 「エピファネイアとキズナは、共にクラシックを戦ったライバルだけでなく、兄弟が共にGIを勝利、そして、繋養初年度は同じ種付け料の設定(250万円)という共通点もあります」
まさに種牡馬となってもライバル関係が続いていますね。
徳武氏 「現役時は共に芝の中長距離を沸かせた馬でしたが、産駒の評判を聞くと、共に短い距離にも高い適性がありそうです」
意外な話かと思っていましたが、実際に2歳馬の取材をしていても、早い時期の新馬戦からデビューを考えている産駒も多く聞かれます。
実際にキズナの産駒であるルーチェデラヴィタが、阪神競馬場での芝1600Mの新馬戦を勝利していますし、2歳トレーニングセールでも、好時計を記録していただけでなく、セールでも高額で取引されていました。
徳武氏 「キズナは産駒の2歳トレーニングセールにおける高い評価を受けて、生産者からの期待も更に高まっているような印象を受けます。
産駒は母父に入ったストームキャットだけでなく、アメリカで活躍をした母系も反映されているのか、スピードとパワーを兼ね備えている傾向があります。
折り合って切れ味勝負と言うよりも、スピードで押し切る傾向が強いようです。
だからこそ距離が短くとも、先行して、そのまま押し切ってしまうようなレースができているのでしょう」
エピファネイアは取材の時点(6月7日)では、まだ勝ち馬こそ誕生させてはいませんが、新馬戦で人気になっているように、仕上がりに秀でた産駒も多く見られていますね。
またホッカイドウ競馬の競走能力・発走調教検査では、一番時計を出す産駒も出て来るなど、高いダート適性も持ち合わせているのではないのでしょうか?
徳武氏 「エピファネイア産駒は、父シンボリクリスエスと母父のスペシャルウィークの馬体に共通する、骨格がしっかりとしている上に、重心の低いロングボディも遺伝されているようです。
調教もしっかりとこなせているだけでなく、シンボリクリスエスの種牡馬成績を見ても、ダートを得意とする産駒が出てきても不思議ではありません」
共に2歳戦の早い時期から勝ち鞍も量産していけそうですね。
徳武氏 「その意味ではディープインパクト産駒や、ハーツクライ産駒が出てこない間隙を縫っていけそうです。
戦いの場はロードカナロアの産駒たちと重なってくるような印象もあります。
勿論、その先にあるのは、いずれクラシック戦線で戦わざるを得ない、ディープインパクトやハーツクライ、そして、キングカメハメハの産駒との直接対決になっていきそうです」
2頭の産駒共に、早めに勝ち上がるだけでなく、成長していく中で父を彷彿とさせるような、芝の中長距離で活躍する馬も出てきそうですね。
徳武氏 「現在のクラシック戦線は、2歳戦の早い時期から勝ち上がれないと、その後が大変になってくる傾向があります。
エピファネイア、キズナの産駒ともに、その状況を打破できる能力があると思いますし、やはり、ダービーの1、2着馬に種牡馬としても成功してもらいたいとの思いは強いです」
一方、リアルインパクトですが、こちらも2歳馬の取材では、父譲りと言えるスピード能力の高さを評価する声が聞かれていました。
徳武氏 「その上、仕上がりもいいと聞いています。
ディープインパクト産駒の牡馬では、初めてGIレースを勝ったのがこの馬でした。
当時はまさかマイルのGIとは…と思われていた中で、その後のまさに世界を股に掛けた産駒の活躍によって、ディープインパクト産駒のマイル適性は世界レベルだということが証明されました」
日本国内でもマイルのGI馬を数多く輩出していますが、昨年はサクソンウォリアーが英2000ギニーとレーシングポストトロフィーと、2つのマイルG1を優勝しています。
徳武氏 「こうした産駒の活躍が、マイルで活躍した後継種牡馬の評価を高めることにも繋がっています。
リアルインパクトの産駒ですが、母系から来る筋肉質の馬体が産駒にも反映されており、見た目にもマイラー色は強そうです。
キズナやエピファネイアより産駒数は少ないものの、強い個性を持った活躍を見せてくれると思います」
ライタープロフィール
村本浩平(競馬ライター)
北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。