ストーリー
レモンポップは2018年2月にオリバーS.テイト夫妻を生産者として米ケンタッキー州で生まれた。日本で成功しているキングマンボ系の父レモンドロップキッド、名門ジャドモントファームに育まれ、伯父に大種牡馬デインヒルを持つ母アンリーチャブルのもとに生まれながら、米キーンランド11月ブリーディングストックセールで日本のパカパカファームにより7万ドル(当時のレートで約800万円)という安価で落札され、ゴドルフィンの所有で引退までにおよそ100倍の賞金を稼ぎ出した。
レモンポップのキャリアを振り返ると、国内で16戦13勝、2着3回のパーフェクト連対という、近年でも稀なほど堅実な戦績を残した点が特筆すべき事実として挙げられる。秀でたスピードを武器とする先行押し切りのスタイルはまさに横綱のそれだった。
レモンポップのデビュー当初は2連勝でカトレアSを制し、ケンタッキーダービーの挑戦ポイント争いをリードするなど夢のふくらむものだった。しかし、脚部不安によりあえなく夢は頓挫。2歳暮れから1年にも及ぶ休養を余儀なくされる事態に見舞われた。
大事な3歳の成長期を棒に振ってしまったレモンポップだが、雌伏の時はむしろ成長を促すために必要だったのかもしれない。復帰から3戦目、明け4歳の1月に久々の白星を手にすると、サビ落としができたとばかりに勝利を重ね、4歳春にはオープン入りを果たすなど破竹の4連勝。重賞初挑戦の武蔵野Sはハナ差で惜敗するも、続く5歳初戦の根岸Sで重賞初制覇、さらにフェブラリーSでG1初制覇と瞬く間にダートの頂点へ駆け上がった。
その後はドバイ遠征で一敗地に塗れたものの、立て直した秋にはマイルCS南部杯で鞍上に追われることなく2着に2秒差をつける圧巻の逃げ切り。次戦のチャンピオンズCは初の1800mに大外枠が重なり、単勝1番人気ながら3.8倍と不安の入り混じる評価しか受けられなかった。それでも、抜群のスタートセンスで再び逃げ切りを決め、史上4頭目となるフェブラリーSとの同一年制覇を達成。JRA賞最優秀ダートホースに選ばれた。
6歳も現役を続行したレモンポップは初戦にサウジCを選択したものの、生涯最低着順の12着に惨敗。前年のドバイに続き、海外での2戦は別の馬のように振るわなかった。それでも、帰国初戦ではG1級に昇格したさきたま杯を快勝すると、ひと息入れて迎えた秋もマイルCS南部杯とチャンピオンズCをそれぞれ連覇して有終の美。国内では完全連対の快記録を残し、史上3頭目の2年連続JRA賞最優秀ダートホースに輝いて種牡馬入りした。