ストーリー
UAEドバイのモハメド殿下が率いる世界的競馬事業体のゴドルフィン。その生産部門を担うダーレージャパンファーム(北海道・日高町)で2013年に生まれたファインニードルは、内国産馬として組織に初のG1タイトルをもたらした。父アドマイヤムーンは早くから頭角を現してクラシック戦線をリード、母ニードルクラフト(その父マークオブエスティーム)も3歳時に仏伊で重賞を2勝したが、息子は4歳秋に素質を開花させる大器晩成型だった。
ファインニードルは2歳秋の訪れとともに初陣を迎えたが、勝ち上がりには晩秋まで3戦を要した。若駒時代は黒星が先行し、4歳2月に一度は条件戦を卒業したが、オープン入り後に連敗すると初夏に降級。出直しの一戦をトップハンデでタイレコード勝ちと力の違いを見せ、晴れてオープン馬となる。
ただ、ここから出世の階段を駆け上がる脚は速かった。オープンに再昇級初戦の北九州記念は直線で進路がふさがり5着に終わるも、続くセントウルSでは3番手から余力十分に抜け出す横綱相撲で重賞初制覇を飾る。前哨戦勝ちの勢いを持って臨んだスプリンターズSは発馬直後の不利により12着と不本意な結果となったが、約4か月の休養を挟む間に一段と成長し、いよいよチャンピオンロードを邁進していくことになる。
5歳初戦のシルクロードSで復帰したファインニードルは、セントウルSを再現するように3番手のインから直線半ばで決着をつける快勝劇。これを最後に所有名義が変更され、モハメド殿下の海老茶からゴドルフィンの青い勝負服を背にして高松宮記念を迎えた。2度目のG1挑戦は発馬も決まり、好位の一角をスムーズに追走。直線で内から抜け出したレッツゴードンキに対し、ファインニードルは馬群の外を回って後れを取るも、しぶとく食い下がってハナ差逆転し、国内生産のゴドルフィン所有馬として初のG1制覇を果たした。
次戦のチェアマンズスプリントプライズでは香港の強豪たちに完敗を喫するも、休養から復帰するとセントウルSを連覇。スプリンターズSでは粘り込むラブカンプーを高松宮記念と同様に執念のこもった末脚で差し切り、今度もクビ差の勝負強さでロードカナロア以来となるスプリントG1春秋制覇を成し遂げた。その後の香港スプリントでは再び世界の壁に跳ね返されたが、2018年は国内無敗で史上初となるスプリント重賞年間4勝を達成。JRA賞最優秀短距離馬の勲章を手土産に種牡馬入りした。